[PS01-35] 亜社会性昆虫ベニツチカメムシは雌雄で飛翔行動が異なる
飛翔による移動分散は不適な環境からの逃避などに有用であるが、飛翔能力の維持にはコストがかかるため、分散と繁殖にはトレードオフの関係がみられる。ベニツチカメムシは唯一の寄主としてボロボロノキの核果を利用する。この資源は年次変動が大きい上、利用可能な期間が1年のうち約2か月間に限られる。したがって、ベニツチカメムシは移動による確実な資源の確保と適切な時期の繁殖とを両立させる必要がある。本研究では、ベニツチカメムシの飛翔分散戦略を明らかにするため、飛翔筋の発達時期や飛翔時期を調査した。その結果、発達した筋組織は、羽化後や生殖休眠中には見られなかったが、春の交尾時期には見られ、産卵後には再び見られなくなった。したがって、本種は休眠中に融解していた飛翔筋を交尾時期に合わせて発達させ、繁殖時期に再び融解すると考えられた。また、サーチライトトラップを用いた調査の結果、交尾済みのメスが産卵時期の夜間に長距離飛翔していることが示唆された。先行研究では、オスが交尾時期の日中に短距離のみ飛翔することが報告されていたことから、本種は雌雄間で飛翔特性が大きく異なると考えられた。