[PS01-57] ヤマヨツボシオオアリにおける共生ウイルスの基礎生態
日本固有種ヤマヨツボシオオアリ(Camponotus yamaokai)の細胞質には、二本鎖RNAウイルスであるCamponotus yamaokai virus(以下CYV)が持続的に感染していることが示唆されていた。本研究では、CYVの基礎生態を解明することを目的として、まずCYVのゲノム解読をおこなった。その結果、ゲノムの構造やORFの相同性からトチウイルス様のウイルスであることが判明した。そこでトチウイルス科のウイルスと系統樹を作成したところ、これまで報告されている節足動物に感染するトチウイルス様ウイルスとは異なるクレードに入ることがわかった。次に、CYVの感染経路を解明するため飼育実験を行ったところ、女王の卵を介した垂直感染が見られたが、個体間の水平感染は検出されなかった。また、日本国内の各地で採集したヤマヨツボシオオアリにおけるCYV感染率を調査した。その結果、調査した全ての巣からCYVは検出され、カースト間で差は見られなかったが、巣内の感染率は個体群や巣によって異なり、平均して8割程度であった。CYVがアリの適応度に中立であるならば、感染率が0%もしくは100%に近づくと予想されるため、本研究の結果はCYVが宿主に何らかの影響を与えていることを示唆する。