[PS01-59] オスゴロシウイルス感染による脱皮ホルモンの攪乱
昆虫は性比を乱す様々な因子に感染しており、性比を乱す仕組みの一つに感染した雄のみを特異的に殺す「オス殺し」現象が存在する。チョウ目のチャハマキの幼虫期においてオス殺しを引き起こすオスゴロシウイルス1-3(OGVs / Partitiviridae)は宿主メスの卵巣を通じて次世代に感染する。現在までに報告されたオス殺しのほとんどは胚期にオスが致死する一方で、OGVs感染オスは若齢期において致死が起きる。その際に脱皮せず致死するという他のオス殺し現象にない特徴を持つが、その原因は明らかではない。 本研究ではオス幼虫が死にゆく過程を明らかにするために、OGVs感染/非感染オス間で遺伝子の比較を行った。その結果、脱皮ホルモンの分解酵素について感染オスのみ遺伝子の発現が減少していた。続いて脱皮が停止しているOGVs感染系統の20-ヒドロキシエクダイソン(20E)の内生量をLC-MS/MSにより測定したところ、20Eが検出された。以上のことから致死前に20Eの濃度が高く保たれており、その結果脱皮阻害が引き起こされ、正常な成長が妨げられていることが考えられた。