[PS01-61] キタキチョウの共食いによる共生細菌ボルバキアの水平伝播の可能性について
昆虫類の半数以上の種が細胞内共生細菌ボルバキアに感染していると推測されている。ボルバキアは宿主の母親から次世代に垂直伝播するため、宿主の生殖を操作し、自らを次世代に広めていく。しかし、ボルバキアの感染がどのようにして多様な分類群へ拡大したのかを理解するには、その水平伝播に関する研究も必要である。ボルバキアの他個体への水平伝播のメカニズムには寄生や捕食が挙げられてきた。本研究ではキタキチョウの雌化を引き起こすwFem系統に注目した。キタキチョウは一部を除くほとんどの地域において、細胞質不和合を引き起こすwCI系統にほぼすべての個体が感染しており、沖縄本島や種子島ではwCIとwFemに重複感染している個体が存在する。キタキチョウの幼虫はしばしば共食いするため、幼虫の共食いを通じてボルバキアが水平伝播する可能性がある。そこで、重複感染個体の体液を単感染個体に注射したり、重複感染個体を単感染個体に摂食させたりして、wFemが水平伝播するかを検証した。注射による水平伝播が少なくない頻度で確認できたのに対し、摂食における水平伝播はほとんど観察できなかった。