日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム2)

2024年3月29日(金) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS01-62] マダラケシツブゾウムシの多種生物間相互作用:細菌との共生を中心として

◯佐野 遥太1、村上 涼生1、鵜嶋 涼1、杉本 凌真1、土`田 努1 (1. 富山大学)

生物多様性の根幹を担う昆虫は、様々な生物種と密接に相互作用しながら存在している。マダラケシツブゾウムシは、寄生植物であるアメリカネナシカズラに寄生してゴールを形成する昆虫である。本種ゾウムシの体内には、Sodalis属の細菌が共生している。すなわち本種ゾウムシは、植物―寄生植物―昆虫―共生細菌間の相互作用を一度に解析できる優れた研究材料と言える。我々は、これらを実験室で周年飼育できる系を確立し、研究を行ってきた。診断PCRによる野外調査の結果、Sodalisは、本種ゾウムシの全個体に感染しており、何らかの重要な役割を担っていることが示唆された。また、抗生物質処理によりSodalis量を抑制すると、ゴール形成が遅延した。ゴールはメス成虫の産卵箇所が肥大化して形成されるため、Sodalisが卵発達や産卵行動に関係していることが示唆された。現在、Sodalis存在量による卵巣発達への影響や、卵黄タンパク質およびその受容体の遺伝子発現量の解析等に取り組んでいる。また、近縁種であるナカグロケシツブゾウムシではSodalisが存在せず、別種の細菌が存在することが確認された。本会では、この結果についても報告し、本種の複雑な相互作用を主に細菌との共生の観点から議論したい。