[PS01-64] ナラ枯れとカシノナガキクイムシの共生微生物叢との関係解明
ブナ科樹木の集団枯死を引き起こすナラ枯れの原因菌ナラ菌は、養菌性昆虫であるカシノナガキクイムシによって媒介され、また培地上で培養可能である。カシノナガキクイムシの孔道からは多様な糸状菌や酵母が見つかっているが、各個体が保有する微生物の詳細については不明な点が多く、ナラ菌の保有率とナラ枯れの関連性は調べられていない。そこで本研究では、ナラ枯れ被害地域におけるカシノナガキクイムシの個体数の時空間変動および共生微生物叢を明らかにすることを目的として、成虫からの真菌の分離培養および菌DNAの抽出を試みた。成虫から単離した菌体のDNAと成虫から抽出した菌DNAの配列をBLAST解析に供したところ、異なる菌種が同定され、さらに同一のサンプルでも使用するプライマーによって検出される菌種に違いがあった。これらの結果から、ナラ菌の保有率を調査するためには複数の手段で微生物叢を調べる必要性が示唆された。加えて、カシノナガキクイムシの発生動態と成虫が保有する菌の多様性についても議論する。