[PS02-02] マルハナバチを介した植物ウイルスの水平伝播の可能性
マルハナバチは野生、栽培植物の受粉に重要な昆虫である。近年、受粉の際にマルハナバチが植物病原体を伝播することが明らかになってきた。オオバコモザイクウイルス(PlAMV)は、接触伝播性の植物ウイルスで、ユリに壊疽症状を引き起こす。分子系統解析によりユリのみの分離株のクレードと、野生植物分離株からなるクレードに分化していることが示され、野生植物からユリへの宿主転換が示唆された。しかし直接接触の機会がないと考えられる多様な植物種への感染は、葉や根の接触だけでは説明ができない。そこで本研究は、野生植物宿主に虫媒花が含まれることから、PlAMVの送粉者を介した水平伝播機構の解明を目的とし、キンギョソウを用いた実験系により検証した。キンギョソウの葉にPlAMV-Pr(サクラソウ分離株)を機械接種したところ、非接種上葉および花に感染した。そこで、ウイルス感染花にクロマルハナバチを訪花させたところ、わずかな訪花回数で脚からPlAMVが検出され、そのマルハナバチに訪花させた健全花からもPlAMVが検出された。さらに、Y字管実験系により、クロマルハナバチはウイルス感染花をより選好した。以上より、PlAMV-Prは感染によってクロマルハナバチを誘引し、水平伝播を促進しうることが示唆された。