[PS02-21] 高山蝶ミヤマモンキチョウの景観学的視点による分布域形成と寄主植物の影響
ミヤマモンキチョウは、北アルプスと浅間山周辺の高山帯に分布する氷期遺存種であり、両山域に亜種が生息する。ミヤマモンキチョウは、寄主特異性が高くクロマメノキのみを寄主植物とする。そのため、ミヤマモンキチョウの分布域形成過程は、クロマメノキの分布や生態的特徴に影響を受ける可能性があるが、その実証研究は極めて限られる。本研究では、景観学的視点によって両種の最終氷期から現在までの分布域変化を明らかにし、ミヤマモンキチョウの分布域形成過程における高山帯への移入パタンを考察する。2020年から2023年までにミヤマモンキチョウ102個体を採取、クロマメノキ316個体を確認した。採取地点の位置情報と環境情報から構築したMaxEntモデルは、ミヤマモンキチョウの出現に影響を与える環境要因として、気温とクロマメノキの存在を示した。また、MaxEntと積算温度モデルを用いて、最終氷期から現在までの両種の分布域変化を推定した。その結果、最終氷期における両種の分布域は、低標高地に位置しており、その後の最温暖期と現在における両種の分布域は、高標高地に遷移していた。また、その遷移過程において、北アルプス山域と浅間山山域の分布域は分断されており、ミヤマモンキチョウ亜種の成立に影響を与えた可能性がある。