[PS02-23] 待機型の寄生をするセスジハリバエの生活史特性
セスジハリバエTachina nuptaは北半球に分布する寄生バエの一種であり、日本ではヤガ科の一部の種が宿主であることが知られている。早春と晩秋に成虫が活動し、植物上などに多数の仔を産み付けるとされる。幼虫は産み付けられた場所に寄主が近寄ってくるまで待機し、寄主が近づくと体表面に付着し寄生が始まり、「待機型寄生」と呼ばれる寄生様式をとる。一般に待機型寄生を行う寄生バエは飼育が困難であり、生活史についても不明な点が多い。本研究では、主としてタマナヤガ終齢幼虫を寄主として使用して、セスジハリバエ(以下、ハエ)の寄生過程や季節適応機構について調べた。以下に、寄主の体表面に人工的に付着させて寄生させた実験における寄生過程の観察結果の概略のみを記す。ハエ幼虫は宿主幼虫体内に侵入すると、宿主が蛹化するまでは宿主表皮の内側に潜伏し、見かけ上成長しない。宿主が蛹化すると剝離した脱皮殻とともに虫体から離れる。その後、一部の個体は宿主の蛹体内に再侵入し、蛹体内で宿主の気管と通じるファネルを形成した後、急速に成長する。ハエの囲蛹は通常、消費された宿主の蛹の中に出現するが、例外的に、宿主が蛹化する前の幼虫体内で成長して幼虫から脱出して囲蛹となる個体もいる。