[PS02-62] キアシヤガコマユバチが重寄生するとアワヨトウ終齢幼虫に対して寄生成功するようになる
キアシヤガコマユバチ(Cr)とカリヤコマユバチ(Ck)はアワヨトウ幼虫(Ms)を寄主とする内部捕食性多寄生蜂である。これら2種は産卵時に毒液(V)とポリドナウイルス(PDV)を注入してMsの免疫を制御することが知られている。栄養的な見地から寄生蜂は若齢幼虫より終齢に寄生するほうが有利であると考えられるが、実際Crは若齢幼虫を好み、終齢である6齢Msには寄生できない。一方、Ckは若齢から終齢幼虫に寄生することが可能であり、Crと比較すると寄生可能なMsの発育段階に差異が見られる。そこで、本研究では、Crが6齢Msに寄生できない要因について、Crの免疫抑制能力に着目し、Ckと比較検討した。その結果、Crを6齢Msに4重寄生させると、寄生成功した。次にCrのPDVを人工的に注入した6齢MsにCrを1匹産卵させると、注入するPDV量の増加に伴い寄生成功率が上昇した。コマユバチ科の寄生蜂のPDVは、寄主の血球や脂肪体に侵入後、寄主の免疫の制御遺伝子またはタンパク質を発現することが知られている。これらのことから、CrはPDVが発現する寄主免疫の制御遺伝子の発現量が低いため、6齢Msに寄生できないと推察される。