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[W08-03] 不妊虫放飼事業におけるゲノム編集技術利用への期待
不妊虫放飼法(SIT)は、大量増殖・不妊化した害虫を野外に放飼することで、防除対象害虫の繁殖を阻害し、密度抑制や根絶を行う技術である。わが国では、南西諸島におけるウリミバエの根絶事業、および小笠原諸島におけるミカンコミバエの根絶事業をそれぞれ成功に導いてきた。現在、沖縄県ではミバエ類に続くものとして、アリモドキゾウムシ、およびイモゾウムシのSITを用いた根絶事業が展開されている。SITによる害虫防除においては、野生虫だけでなく放飼した不妊虫も、モニタリングトラップに大量に誘殺される。そのため、すべての誘殺虫について、野生虫/不妊虫の判定を行わなければならない。一般的には、不妊虫に蛍光マーカーを施すことで両者の識別を行うが、ミバエ類とは異なり、上記ゾウムシ類ではマーカーのコンタミが問題となった。現在、アリモドキでは体色変異を識別に用いているが、中間的な体色を持つ個体が出現するなど、課題が残されている。ゲノム編集により、野生虫にない体色を不妊虫に付与することができれば、迅速かつ確実な野生虫/不妊虫の識別が可能になると期待される。次世代を残さないことが確実である不妊虫は、ゲノム編集生物の害虫防除現場における利用の実用化に先鞭を付けるための、もっとも適した材料であると考える。