5:30 PM - 6:00 PM
[W15-02] 遠くから飛んでくる害虫に殺虫剤抵抗性管理という考え方は通用するのか?
ハスモンヨトウ,シロイチモジヨトウ,オオタバコガ,コナガなど,チョウ目害虫の多くは長距離を飛翔・移動することが知られている.たとえばハスモンヨトウやオオタバコガは東シナ海上で捕獲された事例があるほど飛翔能力が高く,ハスモンヨトウでは日常的に数kmの範囲を飛翔していることが明らかにされている.このような移動性の高い害虫種に対して殺虫剤抵抗性管理という考え方は通用するのだろうか.1980年代から1990年代にかけて全国的に問題となったコナガの殺虫剤抵抗性は,アブラナ科野菜の周年栽培が本種の継続的な発生を助長したことで顕在化している.同様に,近年のシロイチモジヨトウの多発はネギの周年栽培が主な要因と考えられる.害虫としての顕在化と飛来性であることには直接の関係はみられないが,高い飛翔能力を持つ害虫種に対しては,国内の発生源から周辺への移動・分散が起こることを想定しておく必要がある.一方飛来地においては,フェロモントラップ等を利用した飛来実態の正確な把握が重要になる.本講演では,飛来性害虫の殺虫剤抵抗性管理を考える初めての試みとして,チョウ目害虫の移動性と顕在化の事例を紹介しながら今後の課題について考えたい.