日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S03. 地殻変動・GNSS・重力

[S03]AM-2

2020年10月31日(土) 10:30 〜 12:00 B会場

座長:日置 幸介(北海道大学理学研究院)、座長:三井 雄太(静岡大学理学部)

11:30 〜 11:45

[S03-05] 集中豪雨に伴う地殻変動

〇日置 幸介1、Arief Syachrul1、占 偉2 (1.北海道大学理学研究院、2.中国地震局)

地表に置かれた荷重は固体地球の弾性変形をもたらす。古くから知られる海洋潮汐荷重変形に加え、大気荷重、積雪荷重、非潮汐性海洋荷重、ダムの湛水等が、全球衛星航法システム(GNSS)でしばしばみられる季節的地殻変動の要因として考慮され、GRACE衛星による重力季節変化とも定量的に対応づけられている。本研究では2019年10/12に日本列島を襲った令和元年台風19号(Hagibis, Category 5) を主に取り上げ、台風がもたらした多大な降水荷重による固体地球の変形を議論する。雨量はアメダス降雨計に加え、レーダーを用いた高空間分解能の解析雨量を併用した。GEONET測位データは国土地理院のF5解を用いた。全国から選んだ約百点の座標を用いて台風前後±15日間の中央値からの偏差を最小にするようなHelmert変換パラメータ(平行移動、回転、膨張)を日々推定した。それらの変換をGEONET全体に施し、測位解全体に共通な系統誤差を取り除いた。その結果台風の進路に沿った伊豆、福島浜通り、岩手沿岸部などで1-2 cmの沈降が台風上陸日に確認された。また沈降は翌日にはほぼ回復し、雨水が海洋に流出する時定数が1-2日であることがわかる。次にFarrell (1972)の荷重グリーン関数(剛性率は30 GPaとした)を用いてGNSS局の沈降を入力データとして、降水荷重分布を最小二乗法で推定した。台風の低気圧に起因する負の荷重は地殻の隆起をもたらすが、それらはアメダス気圧計のデータから計算した日平均気圧を用いて補正した。台風Hagibisがもたらした本州東部の総降雨量は、解析雨量を時空間的に積分すると約33 Gtとなる。一方、地殻上下変動から推定された荷重はそれをはるかに超える40 Gt程度となる。実際の荷重は、降雨量から一日の流出分を差し引いたものになるはずであり、雨量を超える荷重が実在することは考えられない。この矛盾の原因には、(1) GNSS局が立地する地域の地殻岩石の剛性率が局地的に低い、(2) GNSS局が凹地に選択的に配置されているため雨水が局地的に集中し、地域的な平均より大きな沈降がもたらされた、の二つが考えられる。GNSS局の標高を、GNSS局を中心とする一辺20 kmの正方形の中の平均地形高度(ETOPO1モデルから計算)と比べると、GNSS局の方が平均して数百m低いことがわかった。従って本研究では(2)が主原因と考えている。発表ではさらに台風15号(Faxai, Category 4)や、梅雨前線が例年のようにもたらす西日本の豪雨についても、同様な地殻上下変動と解析雨量を比較する。
Figure: (left) Average time series of 7 GNSS stations around 2019 Oct. 12 from each of the 5 regions, Ise-Shima, Izu, Eastern Nagano, Eastern Fukushima, and Iwate-Aomori, along the path of the typhoon Hagibis (#19 in 2019). We can see significant subsidence on the day of the landfall and recovery on the next day. (right) Subsidence of GNSS stations on 2019 Oct. 12 relative to their median position of the period shown in the left figure. Spatially smoothed with the averaging radius of 20 km. We used the GSI F5 solutions and removed common mode errors by performing daily Helmert transformation to adjust the daily positions to the median positions.