日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S10. 活断層・歴史地震

[S10]AM-2

2020年10月30日(金) 11:00 〜 11:45 C会場

座長:遠田 晋次(東北大学)

11:15 〜 11:30

[S10-02] 宇宙線ミューオンによる跡津川断層の走向・傾斜角測定

〇池田 大輔1、武多 昭道2、山崎 勝也3、小村 健太朗4 (1.神奈川大工、2.東大地震研、3.中部大工、4.防災科研)

地震時の強振動分布や津波の規模と挙動の予測には断層の姿勢とすべり量が必要であるが、地下数10mから数100mまでの断層の姿勢については、測定が困難である場合も多く、観測の空白域となることがある。本研究ではボアホール内に設置可能な宇宙線ミューオン検出器を開発し、地下浅部の3次元密度構造の測定を可能とした。また本手法で跡津川断層の破砕帯において密度構造測定を行ない、断層の姿勢の測定を行なった。この手法により、断層破砕帯や上盤下盤に密度差がある断層浅部の姿勢を測定することが可能である。
 宇宙線ミューオンを用いた透視技術はミュオグラフィと呼ばれ、数十mから数kmまでの構造物の内部構造(平均密度)を非破壊的に測定できる事、一地点から広範囲の領域を測定する事が可能である事から、火山等巨大な構造物の透視が行われてきた。一方で宇宙線ミューオンは上空から飛来するため測定対象は検出器より上方に位置する物に限られる事、既存のシンチレータを用いた検出器はその大きさや電源から設置箇所が限られる事から、地下の構造測定には不向きであった。そこでボアホール内に挿入可能な小型のミューオン検出器を開発した。この検出手法は特定の仰角(約55±15度)に感度があるため、ボアホール内を深さ方向にスキャンすることで、地下浅部の3次元密度構造を測定する事を可能とした。この探査は密度に感度のある測定であり、断層破砕帯や上盤下盤に密度差がある断層の姿勢を測定することができる。
 観測は防災科学技術研究所の跡津川ドリリングプロジェクトにより掘削したボアホールで行なった。ボアホールの直径は15cmであり、シンチレータを用いたミューオン検出器設置空間としては極小である。開発したミューオン検出器を図1に示す。検出器は長さ1mのシンチレータ16枚で構成されており、方位角ごとに到来ミューオン数を測定可能である。本測定器を用いて2016年から2017年にかけて、地下100mまで10m刻みに測定を行なった。
 観測された各深さ各方向からのミューオン数から断層の姿勢の情報を得るためには、本観測状況を反映したミューオン数期待値モデルが必要である。モデルは地表におけるミューオンのエネルギースペクトル、詳細地形データ(DEM)による地中通過距離と地中での減衰量、検出器応答を組み合わせて構築されており、断層の影響の少ない浅部でその妥当性を検証している。このモデルに断層を加え、断層の位置、姿勢を変えた場合のミューオン数期待値と、観測データの一致度を比較することで、断層の姿勢を推定する。一例として、断層を1枚板だと仮定し、走行、傾斜、深さ、幅、密度をパラメータとして、それぞれ走行傾斜を10度刻み、深さ、幅を10m刻み、密度を0.1 g/cm3刻みで動かした結果、最も観測データと一致したパラメータと、走行-傾斜平面でのχ2乗/自由度の様子を図2に示す。この結果は既知の大局的な走行や、ボアホール近傍の露頭に見られる傾斜と良く一致している。
 本研究で構築したボアホール内ミューオン検出器を用いた断層浅部の探査手法は、既存の測定手法では得る事が難しかった地下数10mから数100mにおける広域の断層破砕帯や上盤下盤に密度差がある断層の姿勢を測定するユニークな手法となる。現在、本検出器の改良型として、検出器直径を120mmから86mmへと小型化することで、陸上掘削において最も多用される86コアで使えるようにし、かつ到来天頂角にも感度を持つ測定器を開発中である。