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[S10-08] 平成28年熊本地震後に日奈久断層北端部で確認された余効すべり
平成28年4月16日に発生した熊本地震(M7.3)では,日奈久断層帯高野−白旗区間北部(日奈久断層北端)から布田川断層帯布田川区間沿い約30kmにわたって地表地震断層が出現した(熊原ほか,2016).地震断層沿いの最大右横ずれ変位は2.2mであるが,国土地理院電子基準点やALOS-2による干渉SAR解析からは,広域での地震時変動が捉えられた.さらに,衛星測地の結果からは,地震後も地震時変位と同じセンスの余効変動がさらに広域に継続的に生じていることがわかり,震源断層の余効すべりと下部地殻の粘弾性変形によってモデル化された(例えば,Pollitz et al, 2017).また,中尾ほか(2018)は,GNSS臨時観測から日奈久断層帯で約21cmの余効すべりを推定した.今回,著者らは本震後約4年間に不定期に地震断層を確認した結果,日奈久断層北端の御船町高木地区において目視判別できるほどの顕著な余効すべりを確認したので報告する.
地震後1年間の最も明瞭な変化が確認されたのは,高木地区給油所裏のブロック塀である(図1).テープ計測のため精度は高くないが,地震時には50cmだった右横ずれ(図1c)が1年後には約70cmにまで成長し,ブロックの剥離も確認されている(図1d).また,本震の10ヵ月後に新設されたブロック塀にも約5cmの右横ずれが生じている(2020年8月時点).さらに,その他3箇所で地震後に修復されたアスファルト上に右横ずれに整合的な杉型雁行亀裂や1-2cm程度の上下変位,最大3cm程度の右横ずれ変位が認められた.
GNSSデータによる推定ではあるが,一般にプレート境界型の巨大地震では余効すべりの報告例は多い(例えば,1994年三陸はるか沖地震や2011年東北沖地震).陸上では,サンアンドレアス断層帯上の1966年,2004年パークフィールド地震や2014年南ナパ地震が顕著で,地震時変位と同等かそれ以上の数10cmもの変位が確認されている(Lienkaemper & McFarland, 2017; Lienkaemper et al., 2016).一方,日本列島内陸では,これまで余効すべりが地震断層上で目視確認されたことはない.間接的に1974年伊豆半島沖地震(M6.9)石廊崎断層にて断層を挟む四辺長計測の結果,地震後2年間に7-25mmの余効すべりが報告されているのみである(宮沢・衣笠,1977).なお,干渉SARからは布田川断層・出ノ口断層沿いにも部分的に余効すべりが確認されているが,現地で目視判別できる地点は認められない.「不完全な破壊」に終わった日奈久断層側で顕著な余効すべりが発生している事実は,今後の地震活動を評価するうえで重要であり,未破壊区間の長期評価にも影響する可能性がある.
謝辞:本研究に用いたALOS-2データは、ALOS-2PIプロジェクト(PI No.3183)のもと、JAXAより提供を受けたものである.
文献:Lienkaemper & McFarland (2017) BSSA, 107, 1082. Lienkaemper et al. (2016,) SRL., 87, 609. 熊原ほか(2016)日本地球惑星科学連合大会要旨.宮沢・衣笠(1977)地質調査所特別報告,6, 105. 中尾ほか(2018)平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査報告書.Pollitz et al. (2017) GRL., 2017, 44, 8795.
地震後1年間の最も明瞭な変化が確認されたのは,高木地区給油所裏のブロック塀である(図1).テープ計測のため精度は高くないが,地震時には50cmだった右横ずれ(図1c)が1年後には約70cmにまで成長し,ブロックの剥離も確認されている(図1d).また,本震の10ヵ月後に新設されたブロック塀にも約5cmの右横ずれが生じている(2020年8月時点).さらに,その他3箇所で地震後に修復されたアスファルト上に右横ずれに整合的な杉型雁行亀裂や1-2cm程度の上下変位,最大3cm程度の右横ずれ変位が認められた.
GNSSデータによる推定ではあるが,一般にプレート境界型の巨大地震では余効すべりの報告例は多い(例えば,1994年三陸はるか沖地震や2011年東北沖地震).陸上では,サンアンドレアス断層帯上の1966年,2004年パークフィールド地震や2014年南ナパ地震が顕著で,地震時変位と同等かそれ以上の数10cmもの変位が確認されている(Lienkaemper & McFarland, 2017; Lienkaemper et al., 2016).一方,日本列島内陸では,これまで余効すべりが地震断層上で目視確認されたことはない.間接的に1974年伊豆半島沖地震(M6.9)石廊崎断層にて断層を挟む四辺長計測の結果,地震後2年間に7-25mmの余効すべりが報告されているのみである(宮沢・衣笠,1977).なお,干渉SARからは布田川断層・出ノ口断層沿いにも部分的に余効すべりが確認されているが,現地で目視判別できる地点は認められない.「不完全な破壊」に終わった日奈久断層側で顕著な余効すべりが発生している事実は,今後の地震活動を評価するうえで重要であり,未破壊区間の長期評価にも影響する可能性がある.
謝辞:本研究に用いたALOS-2データは、ALOS-2PIプロジェクト(PI No.3183)のもと、JAXAより提供を受けたものである.
文献:Lienkaemper & McFarland (2017) BSSA, 107, 1082. Lienkaemper et al. (2016,) SRL., 87, 609. 熊原ほか(2016)日本地球惑星科学連合大会要旨.宮沢・衣笠(1977)地質調査所特別報告,6, 105. 中尾ほか(2018)平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査報告書.Pollitz et al. (2017) GRL., 2017, 44, 8795.