1:00 PM - 1:15 PM
[S15-01] What are Influencing Possibilities of the Strong Vertical Impulsive Seismic Motions on Viaduct-Damages of the Tohoku-Shinkansen Railway ?
地震時にこれまで地震計で正確には観測できていない,強力な衝撃的鉛直地震動が働き,構造物にさまざまな被害を起こしていることが,土木学会関西支部の調査研究委員会活動で明らかになりました.その報告書が昨年春に同支部よりnet上に公開されました2.地震計ではこれまでに捉える事ができない,強力な鉛直地震波動がある事を,構造物の被害状況から説明しても長年理解を得にくい状況でした.この状況を変える契機となったのは,120年程前に海震の震度階表(ルドルフの表[1898年,10段階表],シーベルグの表[1923年,6段階表])が作られていたことと,船舶工学者から「海震で船舶が損壊する時の地震波は,疎密波である事は常識である」との指摘を紹介しつつ,構造物の特徴的な破壊状態と海震の証言等を合わせて説明ができたことです.この春には土木学会の中に超過荷重に対する課題も含め調査研究小委員会が新たに設けられました.
問題の強力な衝撃的鉛直地震動の波はどのような波かは,まだ正確には観測できていないので,被災事例や海震の証言などから,現在想像される波の形状や特徴をまとめると次のようになります.
1.従来の地震計では捉えられない高周波だが,破壊力を持つ疎密波である.
2.地震現象の主体的な面と随伴的な面の両面性を持つ波で,M6クラスの地震から破壊力を持つ波が生じる.
3.被害状況が線状で数km程断続する場合もあるが,多くは突き上げ力で局在波的な規模の被害を起こす.
4.波形の頭部は平坦な場合とか釣鐘型の形状が予想され,釣鐘型では孤立波や連立する波形が予想される.
5.構造物の条件・状況・形態等と衝撃的な波の状況や形態とにより,被害状況は多様性を示す.
6.主震時でも余震時でも何度も生じ,震源断層から遠く離れた場所でも,突き上げ力による破壊を起こす.
7.強力な衝撃的鉛直地震波動は主震動より,3分程後に生じる場合こともある(後発鉛直キラーパルス).
8.構造物に振動でなく,突き上げ力の波動による破壊を起こすが,部材軸方向の共振を伴う崩壊も起こす.
9.発生原因は岩盤の割れではなく,物質の相変化が予想される.
上記のような特徴を持つ強力な衝撃的鉛直地震動の波に対して,重要構造物や施設の安全性を確保するために,真の姿を早急に把握して対策を講じることが必要です.しなしながら,大地震自体がめったに起こらず,強烈な突き上げ破壊力を持つ上に,出現状況が孤立波的な状態の場合が多いため,一度や二度の観測値でその全容を把握することは至難の業となり,容易には成果を望めません.
冒頭で述べた委員会報告書2では阪神高速神戸線の橋脚の被害状況に対して,海震の証言を考慮しながら,破壊状態を比較検討し,破壊の発生状況と経過を考察しています.さらにRC単柱の橋脚と地盤を簡易なモデルで表し,基盤層からの鉛直速度波の半波長分1波(一山の突き上げ波)を入射した場合の柱の応力度の応答を検討しました.その結果,周波数依存性があることが分かり,軸方向共振を伴う場合、最初の入射波が圧縮波で伝播する間は共振変位は生じず,次の瞬間の引張の位相になる時に共振する全体変位を誘起し,初めの波より数倍大きな引張応力度を生じます.次の瞬間に共振の半周期で圧縮の位相になると,絶対値で引張応答応力度の最大値を上回る圧縮応力度を生じます.すなわちRCの柱が共振現象を伴うと,見かけ上圧縮破壊をした柱でも,先に引張破壊が先行しており,その後にたやすく押しつぶされています.柱の衝撃的な波動に対する耐荷力は圧縮強度ではなく、引張強度に支配されるという知見が得られました.これは大変重要な知見です.
前述の委員会報告書2では既存の地震での主な被害事例に対して,この知見と前述の9項目の特性を踏まえた新しい視点からの考察も行っています.この視点から東北新幹線高架橋の被害事例を見直してみます.
東日本太平洋沖地震で東北新幹線橋梁に被害がありました.新幹線の高架橋はRC立体ラーメン構造で橋軸方向に3,4径間分を一橋梁とし,その橋梁間を単純桁橋で繋ぐ図1の形式が広く採用されます.被災した橋の内の一つに第1中曽根橋(北上駅北北東約7km)があり,図1はその7番目のR7橋側からR6橋を見た図です.R7橋の始点側の端橋脚(R7-1右,左)に大きな被害が出ており,図2に被害状況を示します.少し離れたR1橋の終端橋脚(R1-5)にも被害があり,その状況を図3に示します.(矢印は打ち継ぎ目位置を示します.)
R7-1の両柱はマッシュルーム型の破壊をしており,重度の被害状況ですが,上部の自重は主桁が支え,この柱の状態では荷重がかかっていません.水平地震動による慣性力が長い時間働き,この被害が生じたとすると,荷重支持能力を失った段階で,この柱を壊す力は隣の柱に付加されるので,隣の柱もそれなりの損傷を生じる筈ですが,図1の通り隣の柱はほぼ無傷です.したがってこの被害原因は水平慣性力ではありません.この判断は被害調査団の判断とは異なります.強力な衝撃的鉛直地震動が局地的に働き,隣の柱と極端な被害度の差を示す典型例と見られます.R7-1柱の被害度には打ち継ぎ目の処理の不完全さが影響しています.
図3のR1-5の両柱の被害状況と似た被害で少し損傷度が軽めの被害が,三陸南地震(2003年,M7.0,
D71km,太平洋プレート内地震)で起きています.図4(a),(b)はその位置図と被害状況の例です.被害は水沢江刺~盛岡間の広い範囲で断続的に生じました.図4(b)には被災柱の他に近隣の柱の状況も見られ、ほぼ無傷の状態です.一事例だけ見た段階ではわかりませんが,図4(b),図3の2例,図2の2例と見比べてみると,局在波的な突き上げ力により柱が引張破壊を起こした状況と過程がよくわかり,詳しい解析が望まれます.
問題の強力な衝撃的鉛直地震動の波はどのような波かは,まだ正確には観測できていないので,被災事例や海震の証言などから,現在想像される波の形状や特徴をまとめると次のようになります.
1.従来の地震計では捉えられない高周波だが,破壊力を持つ疎密波である.
2.地震現象の主体的な面と随伴的な面の両面性を持つ波で,M6クラスの地震から破壊力を持つ波が生じる.
3.被害状況が線状で数km程断続する場合もあるが,多くは突き上げ力で局在波的な規模の被害を起こす.
4.波形の頭部は平坦な場合とか釣鐘型の形状が予想され,釣鐘型では孤立波や連立する波形が予想される.
5.構造物の条件・状況・形態等と衝撃的な波の状況や形態とにより,被害状況は多様性を示す.
6.主震時でも余震時でも何度も生じ,震源断層から遠く離れた場所でも,突き上げ力による破壊を起こす.
7.強力な衝撃的鉛直地震波動は主震動より,3分程後に生じる場合こともある(後発鉛直キラーパルス).
8.構造物に振動でなく,突き上げ力の波動による破壊を起こすが,部材軸方向の共振を伴う崩壊も起こす.
9.発生原因は岩盤の割れではなく,物質の相変化が予想される.
上記のような特徴を持つ強力な衝撃的鉛直地震動の波に対して,重要構造物や施設の安全性を確保するために,真の姿を早急に把握して対策を講じることが必要です.しなしながら,大地震自体がめったに起こらず,強烈な突き上げ破壊力を持つ上に,出現状況が孤立波的な状態の場合が多いため,一度や二度の観測値でその全容を把握することは至難の業となり,容易には成果を望めません.
冒頭で述べた委員会報告書2では阪神高速神戸線の橋脚の被害状況に対して,海震の証言を考慮しながら,破壊状態を比較検討し,破壊の発生状況と経過を考察しています.さらにRC単柱の橋脚と地盤を簡易なモデルで表し,基盤層からの鉛直速度波の半波長分1波(一山の突き上げ波)を入射した場合の柱の応力度の応答を検討しました.その結果,周波数依存性があることが分かり,軸方向共振を伴う場合、最初の入射波が圧縮波で伝播する間は共振変位は生じず,次の瞬間の引張の位相になる時に共振する全体変位を誘起し,初めの波より数倍大きな引張応力度を生じます.次の瞬間に共振の半周期で圧縮の位相になると,絶対値で引張応答応力度の最大値を上回る圧縮応力度を生じます.すなわちRCの柱が共振現象を伴うと,見かけ上圧縮破壊をした柱でも,先に引張破壊が先行しており,その後にたやすく押しつぶされています.柱の衝撃的な波動に対する耐荷力は圧縮強度ではなく、引張強度に支配されるという知見が得られました.これは大変重要な知見です.
前述の委員会報告書2では既存の地震での主な被害事例に対して,この知見と前述の9項目の特性を踏まえた新しい視点からの考察も行っています.この視点から東北新幹線高架橋の被害事例を見直してみます.
東日本太平洋沖地震で東北新幹線橋梁に被害がありました.新幹線の高架橋はRC立体ラーメン構造で橋軸方向に3,4径間分を一橋梁とし,その橋梁間を単純桁橋で繋ぐ図1の形式が広く採用されます.被災した橋の内の一つに第1中曽根橋(北上駅北北東約7km)があり,図1はその7番目のR7橋側からR6橋を見た図です.R7橋の始点側の端橋脚(R7-1右,左)に大きな被害が出ており,図2に被害状況を示します.少し離れたR1橋の終端橋脚(R1-5)にも被害があり,その状況を図3に示します.(矢印は打ち継ぎ目位置を示します.)
R7-1の両柱はマッシュルーム型の破壊をしており,重度の被害状況ですが,上部の自重は主桁が支え,この柱の状態では荷重がかかっていません.水平地震動による慣性力が長い時間働き,この被害が生じたとすると,荷重支持能力を失った段階で,この柱を壊す力は隣の柱に付加されるので,隣の柱もそれなりの損傷を生じる筈ですが,図1の通り隣の柱はほぼ無傷です.したがってこの被害原因は水平慣性力ではありません.この判断は被害調査団の判断とは異なります.強力な衝撃的鉛直地震動が局地的に働き,隣の柱と極端な被害度の差を示す典型例と見られます.R7-1柱の被害度には打ち継ぎ目の処理の不完全さが影響しています.
図3のR1-5の両柱の被害状況と似た被害で少し損傷度が軽めの被害が,三陸南地震(2003年,M7.0,
D71km,太平洋プレート内地震)で起きています.図4(a),(b)はその位置図と被害状況の例です.被害は水沢江刺~盛岡間の広い範囲で断続的に生じました.図4(b)には被災柱の他に近隣の柱の状況も見られ、ほぼ無傷の状態です.一事例だけ見た段階ではわかりませんが,図4(b),図3の2例,図2の2例と見比べてみると,局在波的な突き上げ力により柱が引張破壊を起こした状況と過程がよくわかり,詳しい解析が望まれます.