日本地震学会2020年度秋季大会

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Room A

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15]PM-1

Thu. Oct 29, 2020 1:00 PM - 2:15 PM ROOM A

chairperson:Yo Fukushima(IRIDeS, Tohoku University), chairperson:Yoshiaki Hisada(Kogakuin University)

1:45 PM - 2:00 PM

[S15-04] Causes of Fourier Amplitude Sags at Intermediate Frequencies for Simulating Broadband Strong Ground Motions using Stochastic Green's Function Methods

〇Yoshiaki Hisada1 (1.Kogakuin University)

1.はじめに
 小地震から大地震の波形合成を行う経験的・統計的グリーン関数法を用いて広帯域強震動計算を行う際,目標とする理論的なω2 モデルと比較すると,一般に大地震の震源スペクトルの振幅は中間周波数帯で大きな落ち込みが生じる(例えば文献1)).本論文は小地震として理論的なω2 モデルを用いる統計的グリーン関数法を用いて,振幅スペクトルの落ち込みを4つの要因に分類し,その原因と改善法を理論的に考察した.

2.震源スペクトルにおける中間周波数帯の振幅の落ち込みの要因と改善法
 振幅スペクトルの落ち込みの4つの要因は,下記の通りである.
 (a) F 関数(小地震から大地震の要素地震のmoment rate 関数への変換関数)による中間周波数帯での振幅の落ち込み,
 (b) 低周波数と高周波数で異なる位相スペクトルを用いた波形を重ねることによる接続周波数帯での振幅の落ち込み,
 (c) 大地震の断層分割数(相似比N の2乗個)の増大によりω2 モデルからω3 モデルに漸近することによる中間周波数帯での振幅の落ち込み,および,
 (d) 大地震の断層面上の要素地震を重ね合わせる際,低周波数でのN の2 乗倍から,高周波数でのN 倍の振幅に移行する遷移周波数帯での落ち込み,
このうち、(a)と(c)は従来から知られている「中間周波数帯」での振幅の落ち込みであるのに対し,(b)と(c)は異なる視点から振幅の落ち込みを考察しており,本報告ではそれぞれ「接続周波数帯」と「遷移周波数帯」と呼ぶ.各要因の振幅落ち込みの原因と改善法に関して,まず(a)に関しては指数関数型のF 関数を用いること(例えば文献2)),次に(b)に関しては振幅スペクトルの補正を行うこと(例えば文献3), 4)),がそれぞれ有効であることを確認した. 
 一方,(c)と(d)に関する計算例として,文献1)に倣い1946 年南海地震(Mw8.2)を想定した大地震の震源パラメータとして,Mo=1.0×10^21 Nm, fc=0.03Hz, L=W=100 km とする.破壊開始点は,分割した要素断層のうちで最も断層面の角点に近い要素中心点とし,Vr=2.8 km/s で断層面上を円筒状に破壊伝播させる.(c)に関しては,既存の研究から相似比N の増大により破壊伝播が滑らかになることで振幅が低減することが知られているが(例えば文献1),5)),振幅の落ち込みはN が小さくても発生し,それが要素地震の破壊開始時間間隔に相当する卓越周波数よりも低周波数で必ず落ち込みが生じることを示した(図1参照、文献1)によるランダム破壊時間を考慮した場合).
 小さな相似比Nから振幅が落ち込む原因として(d)では,低周波数での要素地震のコヒーレントな重ね合わせから,高周波数でのランダムな重ね合わせに至る遷移周波数帯で振幅がN の2 乗倍からN 倍に落ち込むことを理論的に明らかにし,振幅の落ち込みは要素地震の破壊開始時間の関数項に起因することを示した(図2参照).
 最後に,振幅落ち込みの実用的な改善法として,理論的なω-2 モデルによる振幅補正を行う手法を提案し,図1,2で用いた震源モデルを用いて,破壊伝播のforward, backward, middle pointにおける強震動を、統計的グリーン関数法を用いて広帯域強震動を計算した.その結果,ω2モデルに基づく震源スペクトルの振幅補正を行わない場合は中間周波数帯の振幅を著しく過小評価することが分かった(図3、4参照).

3.おわりに
 本論文では統計的グリーン関数法を用いて小地震から合成した大地震の震源スペクトルは中間周波数帯で大きな振幅の落ち込みが生じる原因を整理し,その改善法を提案した.なお,本報告ではM8級の大地震を対象として検討を行ったが,M6 級程度(L=W=10km)の小規模な震源モデルを用いた遠方近似解の成り立つ場合の結果検証も行い,ここで得られる結論と全く同じ結果が得られることを確認している.今後は実際の観測地震波を用いた経験的グリーン関数法にも拡張し,適用性を検討する予定である.

謝辞 本研究は工学院大学・総合研究所・都市減災研究センター(UDM)の助成で行われました.

参考文献
1) Irikura, K., Kamae, K., Annali Di Geofisica, Vol. XXXVII, N.6, 1721-1743, 1994.
2) Dan, K., Watanabe, T., Tanaka T., 日本建築学会構系諭文集,第396 号,pp.27-36, 1989.
3) 久田嘉章,SEINWEB,NTTファシリティーズ,テクニカルコンテンツ,2010.
4) Hisada, Y, J. Seismo., Vol. 12, pp.265–279, 2008.
5) 野津 厚,地震,第2 輯,第56 巻,pp.337-350,2004.