日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 30th)

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

S15P

Fri. Oct 30, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S15P-06] Strong Motion Generation Areas and Ground Motion Simulation for the 2019 Ridgecrest Mw7.1 Earthquake

〇Kazuhiro Somei1, Ken Miyakoshi1 (1.Geo-Research Institute)

米国カリフォルニア州リッジクレスト(Ridgecrest)では,2019年7月4日17時33分(協定世界時)にMw 6.4の地震を発端として地震活動が活発化し,翌々日の7月6日3時19分にMw 7.1の地震(2019年Ridgecrest地震)が発生した.2019年Ridgecrest地震は,震源の深さが 8kmで横ずれ型の内陸地殻内地震であった(USGS, 2019).この地震によって,震央周辺のSouthern California Seismic Network(SCSN)の強震観測点のうち,断層最短距離が短い(約3 km)CLCとCCCの2地点の記録に注目すると,震源近傍のCLCでは,最大加速度(3成分最大値)500 cm/s2,最大速度40 cm/sが観測され,震央から約35 km南東に位置するCCCでは,最大加速度556 cm/s2,最大速度69 cm/sが観測された.これらの記録を含む,周辺の最大速度は,地震動予測式(司・翠川, 1999)の値と同程度であり,震源特性としては,同規模の内陸地殻内地震の平均像と近いことが想像されるが,観測速度波形に注目すると,2つ以上の波形パケットが確認でき,複雑な震源破壊過程であったと考えられる.また,本地震後の地表踏査や測地記録によると,震源断層に沿って地表地震断層が生じていることが報告されている(例えば,USGS, 2019).2019年Ridgecrest地震は,周辺の主として1 Hz以下の地震動記録や測地記録に基づいた震源インバージョン解析により,断層面上のすべり分布が推定されている(例えば,Liu et al., 2019).本研究では,1 Hz以上の短周期を含む広帯域の地震動生成過程を議論するために,2019年Ridgecrest地震における0.2-10 Hz の観測地震動を再現する強震動生成域(Strong Motion Generation Area: SMGA)によって構成される震源モデルを推定した.

本研究では,経験的グリーン関数法(Irikura, 1986)を用いた広帯域地震動シミュレーション(0.2-10 Hz)を実施した.経験的グリーン関数は,2019年7月6日3時16分に発生したMw 5.0の地震(要素地震)記録を使用した.本研究の震源モデルは,できる限り単純なモデルで観測波形に見られる複数の波形パケットを含む広帯域地震動を再現するために,正方形のSMGAを3枚仮定し,背景領域からの寄与は無いものとした.また,USGSから公開されているモーメントテンソル(MT)解の幾何形状と余震分布を参考にして,北西-南東走向の横ずれ断層面を設定した.SMGA内の相対的な破壊開始点,破壊速度,SMGAの大きさ,ライズタイムは,震源周辺の16地点3成分の記録の再現性を見て,試行錯誤的に推定した.現時点で得られた3枚のSMGAは,地震発生層内に位置し,震源付近にSMGA1,震源から北西側にSMGA2,震源から南東側にSMGA3の順に破壊した.SMGA1とSMGA3の破壊は南東方向に,SMGA2の破壊は北西方向にそれぞれ進展し,SMGA2とSMGA3は,それぞれSMGA1の破壊開始から2秒後,8秒後に破壊を開始した.これらのSMGAによって,震源周辺で観測された0.2-10 Hzの観測地震動は広帯域に再現することができた.先述した観測速度波形に見られる複数の波形パケットは,震央から南東側の観測点では,時系列で後半の波形パケットの振幅が最も大きく,これは断層南東にあるSMGA3の影響と考えられる.一方で,震央から北西側の観測点では,前半の波形パケットの振幅が大きく,これは主としてSMGA2の寄与であることが確認できた.今後,SMGAのパラメタについては,グリッドサーチ等によって最適解を決定するとともに.震源インバージョンによる震源破壊過程とSMGAモデルの比較を行い,広帯域の地震動生成過程について議論を行う予定である.


謝辞:Center for Engineering Strong Motion Data(CESMD)から公開されているSCSNの強震記録を使用しました.本研究は,原子力規制庁の令和2年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震の特性化震源モデルに係る検討)事業の一部として実施されました.