日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 30th)

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

S15P

Fri. Oct 30, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S15P-05] Rupture process of the 2019 Mw 7.0 Ridgecrest earthquake: Comparison with the 2016 Kumamoto earthquake

〇Hiroaki Kobayashi1, Kentaro Motoki1, Kazuki Koketsu2 (1.Kobori Research Complex, 2.Earthquake Research Institute, University of Tokyo)

2019年7月6日にカリフォルニアのリッジクレストでMw 7.0の地震が発生した.この地震は2016年4月に発生した一連の熊本地震の最大イベントとほぼ同規模である.そこで,本研究ではこのMw 7.0の地震の震源過程解析を行い,Kobayashi et al. (2017)による熊本地震の最大イベント(以下,熊本地震とする)の解析結果との比較を行った.
震源過程解析には強震波形,high-rate GNSS,static GNSSの3種類のデータを使用した.強震波形データはSCEDCより入手し,high-rate GNSSはMelgar et al. (2019)による,static GNSSはUNAVCOおよびFloyd et al. (2020)によるデータを用いた.強震波形およびhigh-rate GNSSデータは0.05-0.4 Hzのバンドパスフィルターをかけた速度波形を用いた.また,数点の強震観測点については,加速度記録から補正を加えて2回積分して得られた変位波形の残留変位もインバージョンに使用した.インバージョン手法はマルチタイムウィンドウ線形インバージョン法(Yoshida et al. 1996; Hikima and Koketsu, 2005)を用いた.グリーン関数の計算には,CVM-S4.26より構築した1Dの水平成層の速度構造モデルを使用した.
断層モデルは地表地震断層(Ponti et al., 2020)と余震分布(Lomax, 2020)を参考に北部・中部・南部の3つのセグメントからなるモデルを構築した.北部セグメントはやや南西傾斜,中部と南部のセグメントはやや南東傾斜とした.各セグメントの長さはそれぞれ16 km,12 km,24kmとし,幅はすべて14kmとした.震央はLomax (2020)によって再決定された位置を用い,震源深さは断層の離散化の都合上約5 kmとした.インバージョン解析では断層を2 km四方の小断層に分けた.各小断層の震源時間関数は幅1秒の箱型関数を12個置くことで表現した.
解析の結果,第一タイムウィンドウの破壊開始時刻を決める破壊伝播速度(Vr)は2.3 kmとなった.破壊は震源からまず北西に進み,その後南東に進んだ.最大すべり(約7m)は震源から4~6 km南東の中部セグメントで得られた.そのほか,北部セグメントに5mのすべりのピークが複数個所得られたほか,南部セグメントに4m程度のピークを持つすべりが得られた.これら大すべりの位置や破壊過程は既往研究(例えば,Liu et al., 2019)と概ね整合的である.地震モーメントは4.5×1019 Nm (Mw 7.0)となりGlobal CMTによる推定値の4.4×1019 Nmとほぼ一致する.
得られた結果を,Kobayashi et al. (2017)による熊本地震の結果と比較する.熊本地震の主断層の長さは54 kmで,ほぼリッジクレスト地震と同じである.面積はKobayashi et al. (2017)が設定している副断層を除いても熊本地震のほうがやや大きい,これは幅の違いによる.なお,Somerville et al. (1999)の規範による断層のトリミングを行っても,両地震ともに面積は変わらなかった.熊本地震の地震モーメント(4.3×1019 Nm)はリッジクレスト地震とほぼ同じである.また,全体のモーメントレート関数も最大値はほぼ同じであった.最大すべりは両地震とも浅い部分に位置しており,その量はリッジクレスト地震のほうが大きいが,熊本地震の最大すべり(4.4 m)は副断層を設定している部分で得られているため比較は難しい.熊本地震の震源は約13 kmと深く,Vrは2.5 kmと,リッジクレスト地震と比べ速い,また,リッジクレスト地震は必要なタイムウィンドウ数も多く,特に南東部への破壊伝播速度はかなり遅かったと考えられる,また,断層上の最大のすべり速度も熊本地震のほうが速い.
本研究では,2019年リッジクレスト地震(Mw 7.0)の震源過程解析を行い,Kobayashi et al. (2017)による2016年熊本地震の結果と比較した.断層長,地震モーメント,モーメントレート関数のピークは両地震ではほぼ同じであり,最大すべりも両地震共に浅い部分に位置している.一方,破壊伝播速度や最大すべり速度はリッジクレスト地震のほうが遅く,その理由の一つとして破壊開始点深さの違いが関係している可能性が考えられる.