日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 31th)

Regular session » S16. Subsurface structure and its effect on ground motion

S16P

Sat. Oct 31, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S16P-01] Estimation of Subsurface Soil Depth Affecting Spatial Variation of Ground Motion between Adjacent Points

〇Ryoichi Tokumitsu1, Yu Yamamoto1, Yasuo Uchiyama1, Susumu Ohno2 (1.Taisei Corp., 2.Tohoku Univ.)

1.はじめに
表層地盤の不均質性に伴う地震動の空間変動には、建物への入力地震動の低減効果が期待される。耐震設計において地震動の空間変動特性の影響を考慮し、建物の地震応答の精度向上を図るためには、表層地盤の不均質パラメータを明確にするとともに、設計において地震動の空間変動の影響を適切に評価するためにモデル化すべき地盤深さを把握することが重要である。
本検討では不均質地盤モデルによる地震動シミュレーションから得られた隣接地点間における応答波形を解析対象とし、Ritter et al.(1998)1)に基づき、地盤の平均S波速度および平均S波速度に対する変動係数、相関距離をパラメータとして、隣接地点間における地震動の空間変動に影響を与える表層地盤の深さを推定する。

2.地震動の空間変動と地盤の不均質パラメータとの関係
Ritter et al.(1998)1)は地震動の空間変動ε(f)を散乱係数および伝播距離との関係式で示すとともに、Shapiro et al.(1993)2)の散乱係数と地盤の不均質性の相関関数との関係式に基づき、ε(f)を地盤の不均質パラメータとの関係式で表現している。例えば地盤の不均質パターンがガウス型に従う場合、(1)式で表現される。
ln(<ε(f)2>+1) = (4π2.5・(σ2 a)・L・f2) / c2 = γ・f2    ……… (1)
ここで左辺の<ε(f)2>のうち、< >は平均を示す。右辺のσは不均質地盤における地盤物性の変動係数、aは相関距離、Lは地盤中の地震波の伝播距離すなわち地盤深さ、fは周波数、cは地盤の平均伝播速度を示す。(1)式は地震動の空間変動<ε(f)2>は係数をγとするfの2次関数で表現されることを示しているとともに、地盤調査によりσ、a、cを把握できた場合、観測記録より<ε(f)2>が求まれば、Lすなわち<ε(f)2>に影響を与える地盤深さを推定できることを示している。なお、(1)式は地震動の散乱の程度が強くない範囲において有効であるとしている。

3.不均質地盤モデルを用いた地震動シミュレーション
解析に使用した不均質地盤モデルの例を図 1に示す。本検討では2次元のFEMモデルを使用した。モデルのサイズは水平方向を500m、深さ方向を200mとし、メッシュサイズは1m×1mとした。地盤の平均S波速度は300m/sとし、ガウス型の自己相関関数に従うようにS波速度を変動させ、相関距離は等方的に10m、変動係数は15%とした。また、本検討では初期乱数を変化させることにより、10パターンの地盤モデルを作成した。なお、地盤の内部減衰は0.5%とした。入力地震動はインパルス的な地震動を与えるため、加振時間0.02秒の三角型関数を地盤モデルの底面よりSH方向に平面入射した。応答波は図 1に示すとおり、モデル両端から150mの範囲を除く幅200mの地表面の領域において、1.0m間隔で抽出した。抽出時間は地震動の入力直後より約10秒間とした。また(1)式のε(f)2はRitter et al.(1998)1)を参考に、隣接する2観測点より抽出した時刻歴波形の振幅を平均した波形と、もとの波形から平均した波形の差分の波形のパワースペクトル比で定義した。

4.空間変動に影響を与える表層地盤深さ
10種類の不均質地盤モデルより抽出したすべての応答波を対象に、離間距離が5m、10m、15m、30m、60mとなる2観測点のln(<ε(f)2>)とfとの関係を図 2に示す。Ritter et al.(1998)1)はln(<ε(f)2>)が0未満の範囲は散乱が強くないとしていることから、本検討では観測点間の離間距離ごとに、ln(<ε(f)2>)が0未満の周波数帯を解析対象とした。図2に基づきln(<ε(f)2>+1)とfとの関係を描いた結果を図 3に示す。また解析対象の周波数帯において回帰分析し、ln(<ε(f)2>+1)をfの2次関数で表現した結果を図 3に点線で示す。回帰係数により求めた回帰係数を(1)式のγに代入し、σ2aとLとの関係を描いた結果を図 4に示す。図 4には本検討で使用した不均質地盤モデルのσ2aに相当する値を黒の点線で示す。σ2aおよびLとの関係の線と不均質地盤モデルのσ2aに相当する黒の点線との交点が地震動の空間変動に影響を与える地盤深さLに相当する。図4に基づき、観測点間の離間距離と地震動の空間変動に影響を与える地盤深さLとの関係を描いた結果を図5に示す。観測点間の離間距離が大きくなるほどLも深くなるが、離間距離が30m以上になると、Lが大きく変化しなくなる傾向が見られる。

参考文献
1) Ritter et al.(1998): Geophys. J. Int., 134, pp.187-198
2) Shapiro et al.(1993): Geophys. J. Int., 114, pp.373-391