日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 31th)

Regular session » S16. Subsurface structure and its effect on ground motion

S16P

Sat. Oct 31, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S16P-02] Overview of ground motions on the islands of Kagoshima, Japan -Using seismograph data of Kagoshima Prefecture-

〇Nobuyuki Yamada1, Kimiyuki Asano2, Tomotaka Iwata2 (1.Kochi University, 2.DPRI Kyoto University)

鹿児島県は,南北約500kmにわたる広範囲に奄美群島,吐噶喇列島,大隅諸島および甑島列島など大小多数の島々を行政区に有する。これらの地域では,沖縄トラフや琉球海溝などでの地震によりたびたび強い揺れに見舞われ,過去には地震被害も発生している(例えば,1911年の喜界島近海の地震M: 8.0[宇佐美(1996)]など)。さらに,将来被害をもたらす地震の発生も危惧され,有人島における地震防災を考える上で,精度の高い地震動評価は必要である。

これら点在する島々には,各市町村に震度観測点(計測震度計は,国際計測器製KSG-T2030)があり,各観測点で得られた加速度波形データ(期間2010年10月~2018年2月)の取りまとめがなされている[地震調査研究推進本部:平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査 (2019)]。また,山田(伸)ほか(2018)では,奄美群島と吐噶喇列島の一部での微動アレイ探査を実施しており,深部地盤構造の概略を推定している。こうした経緯から,本研究では,この震度計データを主に活用し,鹿児島県の島嶼部の地震動を概観し,強震観測点の無い島や地域の地震動特性を明らかにするとともに,今後の南西諸島における地震動評価のための一資料とすることを目指す。

鹿児島県が設置する震度計は73地点あり,3成分を1個とした地震動記録数(観測点×イベント数)は3339個で,そのうち,島嶼部のものは,25地点で1312個であった。地点毎の記録数は,十島村小宝島で最多の162個,同村悪石島で112個,反面,十島村平島で9個,三島村硫黄島で8個,同村黒島で3個であり,記録数に偏りは大きい。記録長は,60~90秒前後のものが多い。

本報告の第1段階として,できるだけ多くの震度観測点での記録が得られている地震(最大で12地点で5地震が該当)や記録数の少ない地点の記録を含む地震の計20地震を選び,各島での地震動の性状の把握を行った。この20地震については,防災科学技術研究所のK-NET(計13地点)によるデータも参照した。対象となった地震の中には,2011年11月8日の東シナ海の地震(Mj: 7.0, 深さ217km)や2015年11月14日の九州西方沖の地震(Mj: 7.1,深さ17km)などがあり,2016年4月16日の熊本地震も含めた。地震の発生場所や規模はばらばらであるが,概ね地域単位での地震動特性の把握ができそうである。いくつかの地震の速度波形によると,喜界町(喜界島)や三島村(硫黄島)などは,S波以降の後続位相が他地点と比して常に顕著であった。これらの島については,例えば,前者は竹中ほか(1997),後者は山田(雅)ほか(2016)で地震動等についての記載がある。また,これらの記録の一部について,S波の立ち上がりを目視またはS波速度を3.4 km/s(山田(伸)ほか(2018)の平均基盤速度を利用)として走時を計算して,そこから40.96s間を切り出し,高速フーリエ変換によりスペクトルの水平動成分の合成を上下動で除したスペクトル比(H/V)も計算した。現段階では,H/Vの形態が地震毎にばらつきが大きい地点もあるためデータ区間の設定など再考を要する点があると考えられるが,多くの地点でそのピーク周期は0.2~0.5 s(喜界島や硫黄島は1.0 s前後)であった。今後さらにこれら震度計等のデータの処理と精査を行い,鹿児島県の島嶼部の地震動特性を明らかにするとともに,表層地質や島の成因などを考慮しながら地震動評価のための地盤構造モデルの推定に活用できるか模索したい。

本研究で使用した地震動波形データについて,震度計によるものは,鹿児島県震度情報ネットワークシステム[鹿児島県危機管理局危機管理防災課]によるもの,K-NETのデータは,防災科学技術研究所によるものです。関係者各位に記して感謝申し上げます。