16:00 〜 17:30
[S16P-03] 3次元CMT解を用いた関東地方における長周期地震動シミュレーションの試み
長周期の変位波形は不均質構造に対してロバストであると考えられており,1次元構造がCMT解析で広く用いられている.しかし,海域などの不均質の強い地域ではその限りではなく,3次元地下構造の考慮が必要であることが報告されている(例えば,Hejrani et al., 2017; Takemura, Okuwaki et al., 2020; Wang & Zhan, 2020).本研究では, 関東地方で2017年4月から2020年3月の間に発生したMw 4.5以上かつ50 km以浅の地震について,F-net広帯域地震計の記録から得られた周期25-100秒の変位波形を利用したCMT解析実施した.そして,本研究で得られた3次元CMT解を利用した地震動シミュレーションを行い,周期数秒以上の長周期地震動(以下、単に長周期地震動)の再現性を評価した.
3次元CMT解析および長周期地震動シミュレーションでは,全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)を利用し,OpenSWPC(Maeda et al., 2017)により地震波伝播を評価した.CMT解の推定には,Takemura, Okuwaki et al. (2020)のグリッドサーチ3次元CMT解析手法を採用した.関東平野における長周期地震動の観測記録とシミュレーション結果の比較にはMeSO-netの記録を利用した.手法やシミュレーションに関する詳細は,Takemura, Yoshimoto & Shiomi (2020)に記されている.
本研究による3次元CMT解(図左側)とF-net MT解を比較すると,震源の深さやメカニズム解に大きな差はなかった.しかし,3次元CMT解では,特にスラブ内で発生する地震についてMwがF-net MT解と比較して最大で0.3程度異なることがわかった.Takemura, Okuwaki et al. (2020)による南海トラフの3次元 CMTカタログでも同様の傾向が見られた.F-net 1次元構造(Kubo et al. 2002)を含む様々な不均質構造を用いた地震動シミュレーションにより,スラブ内地震で見られたF-net MT解と3次元 CMT解のMwの差は,震源域の剛性率構造に起因することが明らかになった.3次元地下構造モデルでは沈み込む海洋性地殻(低剛性率体)と海洋性マントル(高剛性率体)が含まれているのに対し,1次元構造ではMoho面以深では一様な剛性率構造となっており,そのためにMwの推定で系統的な差異が発生した.Mwの大きさは地震動シミュレーションの地震動の振幅と直接的に関係する.本研究の結果は,正確な長周期地震動のモデル化を目指すには,利用する3次元地下構造モデルに調整されたCMT解(例えば,3次元CMT解)を利用する必要があることを示唆している.本研究による3次元CMT解を利用した地震動シミュレーション(図右側)は,CMT解析に使用していないMeSO-net観測点との比較を含め,周期10秒以上の長周期地震動を概ね再現することに成功した.
手法とCMTカタログに関する参考文献
Takemura, Okuwaki et al., 2020 GJI https://doi.org/10.1093/gji/ggaa238
Takemura, Yoshimoto & Shiomi 2020 https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-43689/v1
本研究によるCMTカタログ https://doi.org/10.5281/zenodo.3926883
謝辞 防災科学技術研究所F-net(https://doi.org/10.17598/NIED.0005)とMeSO-netの波形記録を利用しました.地震動計算には東京大学地震研究所 地震火山情報センターの計算機システムおよび東京大学 情報基盤センターのOakforest-PACSを利用しました。本研究は、東京大学地震研究所 共同利用(2020-S-04)およびJSPS科研費19H04626により実施されました。
3次元CMT解析および長周期地震動シミュレーションでは,全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)を利用し,OpenSWPC(Maeda et al., 2017)により地震波伝播を評価した.CMT解の推定には,Takemura, Okuwaki et al. (2020)のグリッドサーチ3次元CMT解析手法を採用した.関東平野における長周期地震動の観測記録とシミュレーション結果の比較にはMeSO-netの記録を利用した.手法やシミュレーションに関する詳細は,Takemura, Yoshimoto & Shiomi (2020)に記されている.
本研究による3次元CMT解(図左側)とF-net MT解を比較すると,震源の深さやメカニズム解に大きな差はなかった.しかし,3次元CMT解では,特にスラブ内で発生する地震についてMwがF-net MT解と比較して最大で0.3程度異なることがわかった.Takemura, Okuwaki et al. (2020)による南海トラフの3次元 CMTカタログでも同様の傾向が見られた.F-net 1次元構造(Kubo et al. 2002)を含む様々な不均質構造を用いた地震動シミュレーションにより,スラブ内地震で見られたF-net MT解と3次元 CMT解のMwの差は,震源域の剛性率構造に起因することが明らかになった.3次元地下構造モデルでは沈み込む海洋性地殻(低剛性率体)と海洋性マントル(高剛性率体)が含まれているのに対し,1次元構造ではMoho面以深では一様な剛性率構造となっており,そのためにMwの推定で系統的な差異が発生した.Mwの大きさは地震動シミュレーションの地震動の振幅と直接的に関係する.本研究の結果は,正確な長周期地震動のモデル化を目指すには,利用する3次元地下構造モデルに調整されたCMT解(例えば,3次元CMT解)を利用する必要があることを示唆している.本研究による3次元CMT解を利用した地震動シミュレーション(図右側)は,CMT解析に使用していないMeSO-net観測点との比較を含め,周期10秒以上の長周期地震動を概ね再現することに成功した.
手法とCMTカタログに関する参考文献
Takemura, Okuwaki et al., 2020 GJI https://doi.org/10.1093/gji/ggaa238
Takemura, Yoshimoto & Shiomi 2020 https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-43689/v1
本研究によるCMTカタログ https://doi.org/10.5281/zenodo.3926883
謝辞 防災科学技術研究所F-net(https://doi.org/10.17598/NIED.0005)とMeSO-netの波形記録を利用しました.地震動計算には東京大学地震研究所 地震火山情報センターの計算機システムおよび東京大学 情報基盤センターのOakforest-PACSを利用しました。本研究は、東京大学地震研究所 共同利用(2020-S-04)およびJSPS科研費19H04626により実施されました。