日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 31th)

Regular session » S16. Subsurface structure and its effect on ground motion

S16P

Sat. Oct 31, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S16P-05] Microtremor Array Surveys in and around the Lowland Area along the Kizu River, Kyoto

〇Kimiyuki Asano1, Masayuki Yoshimi2, Tomotaka Iwata1, Hirotoshi Uebayashi3, Michihiro Ohori4, Haruko Sekiguchi1, Hiro Nimiya2, Tatsuya Noguchi5 (1.Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University, 2.Research Institute of Earthquake and Volcano Geology, GSJ/AIST, 3.Institute for Integrated Radiation and Nuclear Science, Kyoto University, 4.Research Institute of Nuclear Engineering, University of Fukui, 5.Faculty of Engineering, Tottori University)

文部科学省科学技術基礎調査等委託「奈良盆地東縁断層帯における重点的な調査観測」(代表:岩田知孝)サブテーマ3では,奈良盆地東縁断層帯が活動した場合の強震動予測の高度化を目指し,京都盆地や奈良盆地における地盤構造の調査とモデル化のための研究を進めている.京都盆地においては,京都市内から巨椋池にかけての15地点で大半径の微動アレイ探査[京都市, 2001]がなされ,基盤までのS波速度構造が調査されているものの,京都府南部の木津川沿いの低地帯周辺では,これまで深部までのS波速度構造を把握するための調査はほとんどなされていなかった.本研究では,木津川低地での深部地盤構造モデルの改訂に資するため,京都府南部の木津川沿いの低地帯で最小半径0.6 mから最大半径500~600 mまでの微動アレイ観測を実施し,各地点のS波速度構造モデルを推定した.観測計画やアレイ設計を吉見が主に担当し,解析を浅野が主に担当した.微動観測や結果の議論には著者全員が参加した.

微動アレイ観測は,久世郡久御山町佐山から木津川市木津にかけての6地点(KZ01~KZ06)で実施した(Fig. 1).現地での観測は,2020年3月5~7日に実施した.また,データを補うための追加調査を2020年7月15日に実施した.追加調査では比較のため,KZ06の約2 km南に位置する丘陵上の奈良市佐保台(SHD)でも新たに微動アレイ観測(アレイ半径 2~300 m)を行った.微動観測システムは東京測振製速度計SE-321(5 V/(cm/s))と白山工業製収録装置LS-8800(アンプゲイン8倍)を組み合わせたシステムを主に使用した.小半径のアレイの一部では白山工業製ポータブル微動観測装置JU410(2 V/G,アンプゲイン100倍)を使用した.サンプリング周波数は200 Hzとした.いずれも正三角形アレイによる4点同時観測とし,アレイ半径を変えて1地点あたり6~7組の観測を行った.アレイ設計に際しては,竿本・吉見(2020)による微動アレイ探査における地震計設置場所選定プログラムを使用した.プログラムに必要なOpenStreetMapの道路情報が不足していた地域(農地など)については,地図情報を追加した.観測はすべて日中に行い,半径10 m以下の小アレイでは少なくとも20分以上,中規模の半径のアレイでは30分以上,半径200 m以上の大アレイでは1時間以上測定した.

微動アレイ観測で得られた上下動記録にSPAC法を適用し,位相速度を推定した.例えば,1 Hzでの位相速度を比べると,北からKZ01とKZ02では約0.7 km/s,KZ03とKZ04では約1.2~1.3 km/s,KZ05では約0.9 km/s,KZ06とSHDでは約1.0 km/sと地域による違いが見られた.なお,KZ06とSHDの分散曲線は低周波数帯(< 1.5 Hz)では似ており,丘陵部と低地で深部構造の違いは小さい可能性がある.木津川沿いの低地帯での高周波数側(約10~20 Hz)の位相速度は,各地点で0.10~0.15 km/sであり,木津川沿いの沖積層の存在に対応する.

位相速度分散曲線をRayleigh波基本モードでモデル化することにより,各地点の一次元S波速度構造を推定した.J-SHIS V2やJIVSMなどを参考にして,層構造モデルを仮定した上で,第1層からVS 2.7 km/s層までの各層の層厚と第1層のVSをMCMC法で推定した.上部地殻はJ-SHIS V2,上部/下部地殻境界~上部マントルはJIVSMから一次元構造として与えられるモデルに固定した.VS 2.7 km/s層の上面深度は,KZ01とKZ02では約640~650 mと深く(参考:京都盆地最深部の巨椋池での基盤深度は約700 m[京都市, 2003]),木津川沿いのKZ03,KZ05,KZ06とSHDでは約400~440 mの深さと推定された.KZ04ではより浅い.推定された基盤深度は既往の反射法探査結果[横倉・他, 2002; 京都府, 2006]とも大きく矛盾しないものであった.木津川左岸の相楽郡精華町周辺のKZ05では,VS 0.8~0.9 km/sの層が堆積層全体に占める割合(約80%)が,低地帯の他の地点(59~66%)に比べて大きかった.この地点付近では,大阪層群の最下部層の占める割合が相対的に大きいのではないかと推測される.

今後,本研究の微動アレイ探査結果やその他の調査結果(反射法地震探査,ボーリング資料など)を取り入れて,奈良盆地東縁断層帯周辺の3次元地盤構造モデルの改訂が進められていく予定である.
謝辞:本研究は文部科学省科学技術基礎調査等委託「奈良盆地東縁断層帯における重点的な調査観測」の一環で実施しました.現地での微動アレイ観測では,対象地域の土地改良区や実行組合はじめ,地域の皆様にお世話になりました.記して感謝いたします.