日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S03. 地殻変動・GNSS・重力

[S03P] AM-P

2022年10月24日(月) 09:30 〜 12:00 P-1会場 (10階(1010〜1070会議室))

09:30 〜 12:00

[S03P-05] 継続時間1時間のスロースリップイベント(2)

*勝間田 明男1、宮岡 一樹2、露木 貴裕3、板場 智史4、田中 昌之3、伊藤 武男6、高森 昭光5、新谷 昌人5 (1. 富山大学、2. 気象庁、3. 気象研究所、4. 産総研、5. 東大地震研究所、6. 名古屋大学)

(1)はじめに
 継続時間約1時間のスロースリップ(以後1時間SSE)現象について調査している。用いているのは、犬山観測点(名古屋大・東大地震研究所)及び天竜船明観測点(気象研究所)に設置されているレーザーひずみ計と気象庁・産業技術総合研究所が設置しているボアホール型多成分ひずみ計のデータである。1時間SSEは、短期的スロースリップ発生中の一時的なすべり速度増加現象と見られる(例えば、勝間田・他, 2021)。これまでのところ、見つかっている1時間SSEの規模はMw5前後の値となっている。これはIda et al.(2007)によって提唱されたスロー地震のスケーリング則に調和的である。


(2)方法と結果
 短期的SSEの発生期間中のデータについて、宮岡・横田(2012)によるスタッキング手法によりS/Nを向上させたデータを用いた。スタッキング法においては、断層位置・すべり方向を仮定して、ノイズレベルに基づい重みをつけて複数観測点のデータを足し合わせた。なお、検出された信号のレベルはノイズに比べて明確に大きなものでなく、降雨のある期間ではその影響により1時間SSEは検出困難である。スタッキングしたデータとランプ関数との間で相関係数が高くなる部分について、そのステップ量からの規模推定、ソースの位置推定などを行った。ソースの位置推定は、露木・他(2017)と同様の決定係数に基づく方法を用いた。ランプ関数との相関係数が高く、ひずみにステップ状の変化が認められる場合でも、ソースの位置推定が困難な場合があり、そのような場合には実際の現象ではない可能性が高いと考えた。
 2015年から2020年まで解析した結果において、もっとも明瞭に認められる1時間SSEは2019年2月3日~6日に発生した短期的スロースリップ発生した現象である(図参照)。このイベント中では短期的SSE発生中に3回の1時間SSEの発生が認められる。3回のイベントの発生位置はほぼ同じ場所に求められている。2019年2月の他にも1時間SSEと見られる現象はあるが、必ずしも2019年2月ほど明瞭ではなかった。S/Nが十分な1時間SSE現象が起きる頻度は、あまり大きくないのかもしれない。