The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09] AM-2

Thu. Nov 2, 2023 10:45 AM - 12:00 PM Room A (F205+206)

chairperson:Kei Katsumata, Kazuyoshi Nanjo Nanjo

11:00 AM - 11:15 AM

[S09-15] Shear strain energy change estimated by the current crustal deformation in Japan and spatial correlation with the crustal seismicity

*Taku Ueda1, Takuya Nishimura1 (1. Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)

地震はプレートの相対運動により地球内部に生じた応力を解放するために発生する。そのため、ひずみの増加が地震発生帯での応力蓄積に対応するという仮定から測地データから推定される地球内部のひずみ速度と地震の発生頻度は相関することが考えられ、これまでカリフォルニアなどの領域でその関係性が議論されてきた(e.g., Kreemer and Young, 2022)。
しかしながら、日本では測地学的に観測される最大圧縮ひずみと地震学的に観測される最大圧縮応力の方位が異なる領域が存在する(Kosugi and Mitsui, 2022)。そのため、ひずみの増加が必ずしも応力蓄積と対応しない可能性がある。本研究では日本の地殻内の背景地震発生数と、背景応力場と現在の地殻変動を考慮したせん断ひずみエネルギー変化(Saito et al., 2018)を比較した。
せん断ひずみエネルギー変化の計算における応力変化の推定には、国土地理院(GEONET)、海上保安庁、京都大学、国際GNSSサービス(IGS)、UNAVCOから公開されているGNSS観測点のデータを使用した。各観測点の日座標値(2006-2009年)をソフトウェアGipsyX Ver. 1.4(Bertiger et al., 2020)を用いて算出した。各観測点の各成分(東西・南北)の時系列データに対して共通誤差を除去し、季節変動成分と顕著なステップ変動と共に平均変位速度を推定した。推定した平均変位速度を用いてOkazaki et al.(2021)の手法を用いて水平歪速度場を推定した。平面応力状態を仮定して歪速度テンソルを応力テンソルに変換し、Uchide et al. (2022)で推定された背景応力場に対するせん断ひずみエネルギー変化(を差応力と剛性率の比で割ったもの)を評価した。
背景地震発生数の空間分布は上田・西村(2023, JpGU)で推定したもの(M > 3.0、1980-2010年、深さ25km以浅)を使用した。対象領域は、新潟神戸ひずみ集中帯、奥羽脊梁地帯、山陰ひずみ集中帯、別府島原地溝帯を含む領域とした。
新潟神戸ひずみ集中帯と奥羽脊梁地帯では背景地震発生数とせん断ひずみエネルギー変化が弱〜中程度の相関(相関係数=0.1~0.5)が見られ、これらの相関は統計的に有意であった(p < 0.05)。特に奥羽脊梁地帯では、背景地震発生数とひずみ速度(せん断ひずみ速度・二次不変量)との相関よりもせん断ひずみエネルギー変化との相関の方が良くなった。山陰ひずみ集中帯と別府島原地溝帯では、統計的に有意な相関は見られなかった。山陰ひずみ集中帯を含む領域では、一部の領域(山陽地方)で負のせん断ひずみエネルギー変化が推定された。それらの領域でも地震が発生していることが、有意な相関関係が見られなかった要因であると考えられる。別府島原地溝帯を含む領域では、別府島原地溝帯と南九州せん断帯でせん断ひずみエネルギー変化が大きくなる傾向が見られた。微小地震(M1〜2)の震源分布でもこの2つの領域で地震発生数が多い傾向が見られるため、微小地震の背景地震発生数を評価することで、結果が改善されることが期待される。

謝辞:気象庁の一元化処理震源カタログを使用しました。GNSSデータは国土地理院、海上保安庁、京都大学、国際GNSSサービス、UNAVCOから公開されているデータを使用しました。岡崎智久博士からひずみ速度場を推定するコード(Okazaki et al., 2021)をいただきました。本研究はJSPS科研費JP22KJ1770の助成を受けたものです。記して感謝いたします。

参考文献
Saito et al. (2018): Shear strain energy change caused by the interplate coupling along the Nankai Trough: An integration analysis using stress tensor inversion and slip-deficit inversion, JGR: Solid Earth, 123, 5975-5986.
Okazaki et al. (2021): Consistent estimation of strain-rate fields from GNSS velocity data using basis function expansion with ABIC, EPS, 73:153.
Uchide et al. (2022): Stress map of Japan: Detailed nationwide crustal stress field inferred from focal mechanism solutions of numerous microearthquakes, JGR: Solid Earth, 127.
上田・西村 (2023): 日本のひずみ集中帯とその周辺域での背景地震活動度とひずみ速度の関係性、JpGU2023年大会、SSS10-P15.