The 2023 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Room D

Special session » S22. Earthquake swarms and M6.5 earthquake in/around the northeastern Noto Peninsula

[S22] PM-1

Tue. Oct 31, 2023 1:30 PM - 2:45 PM Room D (F204)

chairperson:Tomotaka Iwata, Michihiro Ohori

1:45 PM - 2:00 PM

[S22-11] Ground Motion Records of Temporary Observation Stations in Suzu City for the May 5, 2023 Noto Earthquake (M6.5)

*Michihiro OHORI1, Haruhiko SUZUKI2, Tomotaka IWATA3, Kimiyuki ASANO3, Osamu ISHITUKA2, Akira MURATA4 (1. School of Environmental Science, University of Shiga Prefecture, 2. OYO Corporation, 3. Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University, 4. Institute of Science and Engineering, Kanazawa University)

1. はじめに
 2023年5月5日14時42分に能登半島北東部でM6.5の地震(以降,本震)が発生し,K-NET正院(ISK002)では最大震度となる震度6強を記録した.さらに21時58分にはM5.9 の地震(以降,余震)が発生し,ISK002では震度5強を記録した.これらの地震により,死者1名,重傷者2名,軽傷者42名の人的被害と,全壊18棟,半壊15棟,一部破損706棟の住家被害が生じた.このほか,鳥居・墓石・ブロック塀の転倒,斜面崩壊,水道管破裂,液状化による噴砂等も発生した.約1年前の2022年6月19日15時8分にも能登半島北東部でM5.4の地震が発生し,石川県珠洲市のISK002では震度6弱を記録した.昨年の地震では,犠牲者はなく重大な住家被害もなかったが,鳥居・墓石・ブロック塀等の転倒が注目された.本研究では,昨年の地震直後から実施している珠洲市内における臨時地震観測の概要と,本震および余震の地震動記録について報告する.

2. 臨時地震観測の概要および本震と余震の記録
 筆者らは,昨年の地震の翌日に被害状況の概略調査を実施し,同年7月初めより墓石やブロック塀の被害が多数見られた正院地区を中心に臨時地震観測点を6点設置し,余震観測を実施している(大堀ほか,2023JPGU).地震計はMcSEIS-AT(3ch)(応用地質製,以降,McSEIS)を用いた.6地点で同時観測できた地震は2023年3月末で10個(M3.5~M4.4)であった.記録を増やしたかったことと,地震活動が続いていたことから,4月以降も引き続き観測を継続したところ,5月5日に本震と余震が発生した.この時,臨時観測点は,ソーラーパネルとカーバッテリーを併用した2点(SNK,SIK)では欠測となったが,AC電源を利用した4点(KMN,KFK,NNE,KSG)では記録が得られた.ただし,本震では2点(KMN,KFK),余震では3点(KMN,KFK ,NNE)の水平成分の観測値に数サンプル(サンプリング周波数は100Hz)の飽和が見られた.飽和した観測値はスプライン関数を用いて補正することで,飽和が生じなかった際の記録をほぼ復元できたと考えている. なお,臨時観測点における本震の計測震度相当値は,KMNが5.77, KFKが 5.68,NNE が5.61,KSGが5.65と算出され,ISK002の6.10に比べて小さい結果となった.余震の計測震度相当値は, KMNが5.38, KFKが 5.56,NNE が5.49,KSGが5.29と算出され,ISK002の5.45とほぼ対応する結果となった.KMNはISK002から約18mの距離に位置し,参照用に設置した観測点である.両地点の計測震度は余震ではほぼ同等であったが,本震では0.33の違いが見られた.これは波形振幅(計測震度の算出過程における修正加速度)では約3割の違いに相当する.ISK002 の加速度波形を積分した速度波形に対しても,KMNの速度波形は最大振幅で4割ほど小さい.KMNの波形振幅が小さい理由は,上述の記録が飽和した問題とは異なる地震計の特性によると推察される.

3. 記録の飽和に関する振動台実験
 臨時観測点で得られた本震および余震の記録に飽和が見られたのは,McSEISのセンサー(速度計,固有周波数は約2Hz)からの電圧信号がロガーの電圧入力範囲±2.5Vを超えたために生じた.ここでは,McSEISの速度計とロガーのそれぞれの特性を把握するために振動台実験を行った.実験には,京都大学防災研究所の振動台(LING Dynamic Systems LTD製感震器較正装置)を用いた.振動台上に, McSEISの速度計とJEP-6A3(アカシ社製加速度計)を固定し,McSEISの速度計からの電圧信号をMcSEISのロガーおよびGL900-8(Graphtec社製,電圧入力範囲±5.0V)を用いて測定するとともに,加速度計からの電圧信号をGL900-8で測定した.加振条件は振動台の稼働域(両側振幅17.6mm)とMcSEISの飽和時の速度振幅(約12cm/s)を考慮し,10Hzの正弦波加振とした.McSEISのロガーへの電圧入力の上限を少し上回るように両振幅約4mmを最大として与え,振幅を段階的に低減するように加振した.加振方向は水平方向と上下方向のそれぞれについて実施した.水平方向の加振時にはセンサーの向きを90度回転させることで,水平2方向の特性評価を行った. その結果,McSEISの速度計に関してはいずれの方向においても約800cm/s2に相当する揺れに対して正常な動作を示すことがわかった.一方,McSEISの速度出力は,振幅が約6cm/s を超えると感度が小さくなる傾向が認められ,水平動では約5%,上下動では約12%の低減していることがわかった.McSEISのロガーの特性について,今後,より低い周波数帯における検討を行い,本来の観測値の目安を示したいと考えている.

謝辞
 本研究は科学研究費補助金・特別研究促進費22K19949,23K17482(代表:金沢大学・平松良浩教授)の一環として実施しました.その他,科研費基盤研究(20K04663,21K04585)の支援を頂きました.研究の一部は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を頂きました.現地での観測では,珠洲市のみなさまより多大なご協力を頂きました.東京大学地震研究所三宅弘恵先生からは研究を進める上で多くのご助言とご支援を頂きました.記して感謝申し上げます.