[S01P-06] Ambient noise surface wave analysis using DAS and seismometer data: cross-spectrum and travel-time anomaly due to source heterogeneity.
近年,海底ケーブルを用いたDistributed Acoustic Sensing(以下 DAS)により,海底における歪みを数m間隔で数十km長距離観測が行えるようになった.この稠密なDASデータに対して,spatial autocorrelation法(以下,SPAC法)を適用することにより,これまで推定することが困難であった,海域における堆積層・最上部地殻のS波速度構造を高分解能が実現した (e.g., Fukushima et al. 2022).しかし,DASデータだけを解析に用いた場合,Rayleigh波に加えてLove波がcross-spectrumに混入し,Rayleigh波位相速度推定の精度が低下することが知られている(Nakahara et al. 2021, Fukushima et al. 2024).そこで近年,DASと地震計上下動の記録を組み合わせたSPAC法が提案され(Fukushima et al. 2024),Love波の影響を除外することで,従来のDASデータだけを用いた解析と比較してRayleigh波の位相速度を高精度に推定が可能となった.先行研究(Fukushima et al. 2024)では, 表面波が等方的に観測点へ入射した場合について,cross-spectrumの解析解を導出している.その一方で,実際のデータ,特に海岸から近い距離に敷設された海底ケーブルを用いたDASデータの場合では,表面波が非等方的に入射する状況が考えられる(e.g., Nishida et al. 2008,Fukushima et al. 2024).しかしながら,表面波が非等方的に入射し,DASと地震計上下動記録を用いた場合のcross-spectrumの解析解は導出されていない.そこで,本研究では,表面波が非等方的な振幅でランダムに入射した場合のDASと地震計の上下動変位記録に対するcross-spectrumの解析解を導出した.本研究の定式化はNakahara et al. (2021)に従い,定式化を行なった.円筒座標系を考え,原点にDAS観測点を設置し,距離r離れた位置に地震計を配置した(添付図).この時,DAS記録は任意の方向の軸歪みを記録し,また地震計は任意の方位角に設置した.さらに,Love波とRayleigh波は互いに無相関であると仮定した.入射する表面波の波動場は非等方的であり,方位角についてフーリエ級数展開を行った.その結果,mをフーリエ級数の次数とした場合に,m次,m-2次,そしてm+2次の第一種Bessel関数がcross-spectrumへ寄与することがわかった.さらに,本研究では,導出したDASと地震計の上下動変位記録に対するcross-spectrumの解析解を用いて,source heterogeneityによって生じる走時異常について解析的な見積りを行なった.ここでは,Nishida et al. (2024)に従い導出を行なった,Bessel関数およびNeumann関数の漸近展開(Abramowitz et al. 1988)を用いた.そして,観測点間隔が波長よりも十分に長い場合を仮定した.以上の定式化により, DASと地震計の上下動変位記録に対するsource heterogeneityによって生じる走時異常は,
B''(ξ,ω)/2kRrB(ξ,ω)
で示されることがわかった(ここで,kRはRayleigh波の波数, rは観測点間距離, Bは表面波のintensity,ξは観測点の設置方向,ωは角周波数をそれぞれ示す).DASと地震計の上下動変位記録を用いた場合のsource heterogeneityによって生じる走時異常は,地震計の上下動記録だけを用いた場合(Weaver et al. 2009, Nishida et al. 2024)と同じ大きさであることがわかった.実データへの応用を考えた場合には,入射方位角に関するフーリエ級数展開の次数によって決めるべきパラメータが異なるため,cross-spectrumの解析解から直接走時異常を見積もることは難しい.その一方で,本研究により導出した走時異常の解析解は, アレイ解析等を用いて観測可能である,入射する表面波の”intensity”とその2階微分だけで表現されるため,走時異常の見積もりが可能である.
B''(ξ,ω)/2kRrB(ξ,ω)
で示されることがわかった(ここで,kRはRayleigh波の波数, rは観測点間距離, Bは表面波のintensity,ξは観測点の設置方向,ωは角周波数をそれぞれ示す).DASと地震計の上下動変位記録を用いた場合のsource heterogeneityによって生じる走時異常は,地震計の上下動記録だけを用いた場合(Weaver et al. 2009, Nishida et al. 2024)と同じ大きさであることがわかった.実データへの応用を考えた場合には,入射方位角に関するフーリエ級数展開の次数によって決めるべきパラメータが異なるため,cross-spectrumの解析解から直接走時異常を見積もることは難しい.その一方で,本研究により導出した走時異常の解析解は, アレイ解析等を用いて観測可能である,入射する表面波の”intensity”とその2階微分だけで表現されるため,走時異常の見積もりが可能である.