The 2024 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Oct. 22nd)

Regular session » S01. Theory and analysis method

[S01P] PM-P

Tue. Oct 22, 2024 5:15 PM - 6:45 PM Room P (Main Hall (2F))

[S01P-08] Energy partitioning into strain components in diffuse wave fields (3)

*Hisashi NAKAHARA1 (1. Tohoku University)

はじめに 震源から輻射された地震波は,媒質の不均質構造により変換散乱を繰り返し,充分時間が経過した後にはエネルギー等分配状態に達することが予測される.例えば,P波とS波のエネルギー比や変位3成分へのエネルギー分配は初期状態によらず一定値になる (たとえば, Weaver, 1982; Sanchez-Sesma and Campillo, 2006) .近年,分散型音響計測(DAS)により歪地震動の計測が行われるようになってきた.そこで著者らは,DASの歪記録を理解するための基礎研究として,歪の各成分へのエネルギー分配について研究を進めている.中原(2023,連合大会)では2次元無限媒質に対して,中原・江本(2023,地震学会)では3次元無限媒質に対して,歪の各成分へのエネルギー分配を明らかにした.本研究では,3次元半無限均質媒質の自由表面における歪の各成分へのエネルギー分配について検討した.

原理 2つの先行研究では,以下の地震波干渉法に基づく原理を利用した.波動場が等方かつエネルギー等分配状態にあり,震源と観測点が同じ場合,歪テンソルの(i, k)成分であるeikのエネルギースペクトルは,モーメントテンソルのMikMki成分に対するeikのグリーン関数の和に比例する(Nakahara and Haney, 2022).この関係式で,考慮したい媒質に対するグリーン関数を用いると,歪テンソルの各成分のエネルギースペクトルを具体的に計算することができる.この原理は3次元半無限(均質)媒質に対しても成立するが,グリーン関数をP波,S波,レイリー波に分離するのはそれほど容易ではない.本研究ではP波,S波,レイリー波のそれぞれの寄与も知りたいため,異なるアプローチをとる.Weaver(1985)は,半無限均質媒質の自由表面にP波,S波,レイリー波がエネルギー等分配を満たし等方的に入射する場合を考え,自由表面上における変位3成分へのエネルギー分配と,それぞれにおけるP波,S波,レイリー波の寄与を計算した.そこで本研究では,Weaver(1985)の定式化を歪に拡張し,歪の各成分のエネルギー分配ならびにそれぞれの成分におけるP波,S波,レイリー波の寄与を計算した.

結果・議論 鉛直下向きにz軸をとったデカルト座標系を採用し,エネルギー等分配かつ等方状態の下で,自由表面上における歪テンソルの独立6成分の自乗振幅(エネルギー密度に比例)について定式化することができた.自由表面では,境界条件によりせん断歪は0になり,残りの4成分が0ではない値をもつ. x軸方向の軸歪は,x軸に平行に設置された光ファイバーを用いたDAS観測により計測できる量である.ポアッソン媒質の場合, P波,SV波,SH波,レイリー波の寄与は,軸歪ではそれぞれ約4%,11%,33%,52%となり,レイリー波の寄与が最大となる.また等方性を仮定しているので,である.せん断歪では,それぞれ約2%,5%,45%,48%となり,同じくレイリー波の寄与が最大となる.また,せん断歪の大きさは軸歪の約0.730倍となる.ちなみに,3次元無限均質媒質に対しては約0.713倍(中原・江本,2023),2次元無限均質媒質では約0.833倍(中原,2023)であり,3次元半無限均質媒質の結果は両者の中間となった.

結論 3次元半無限均質媒質における歪各成分へのエネルギー分配とそれぞれにおけるP波,S波,レイリー波の寄与の定式化を行い,数値的に計算した.その結果,DASで観測される軸歪のエネルギーに対するP波,SV波,SH波,レイリー波の寄与が明らかになった.今後,自由表面上だけでなく深さ依存性も詳しく調べる予定である.