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[S02-09] MOWLASの8番目の観測ネットワーク:N-net
~沖合システムの観測開始と沿岸システムの構築~
ユーラシアプレートにフィリピン海プレートが沈み込む西日本の太平洋側では、100から200年ごとにM8クラスの巨大海溝型地震が繰り返し発生し、大きな被害を生じてきた。その想定震源域の東側の海域は既に防災科研のDONETや気象庁の東海・東南海ケーブルによって地震と津波のリアルタイム観測がなされているが、西側の海域は観測の空白域をなっており、この空白域を解消するため当該海域において南海トラフ海底地震津波観測網N-netの構築が進められている(AGU2022, UT2021)。N-netは沖合システムと沿岸システムの2つのサブシステムからなり、各々18台のインライン観測装置が海底ケーブルに接続され、計36台が海底に設置される。各インライン観測装置には、地震を観測するための加速度型強震計および短周期速度型地震計、津波を観測するための水圧計が、それぞれ冗長構成で2式ずつ組み込まれている。N-netはインライン観測装置に加え、将来的な拡張性を確保するため観測機器の増設を可能にする分岐装置を備えたハイブリッドシステムを採用しており、各サブシステムに分岐装置が2台ずつ備えられる。防災科研では2023年10月から2024年1月にかけて沖合システム及び沿岸システムのケーブルの陸揚げ工事及び沖合システムの敷設工事を実施した。沖合システムは2024年7月から試験運用を開始しており、8月8日に発生した日向灘の地震(Mj7.1)を含む多くの地震を観測している。また、水圧計では潮汐に伴う水圧変動はシミュレーションと良い一致が得られているほか、日向灘の地震に伴う津波では津波帯域でサブセンチまでの変動が記録されている。防災科研は、日本の全国に7つの観測網、2,100以上の観測点からなる陸海統合地震津波火山観測網MOWLAS(Aoi et al., 2020)を運用している。2024年秋に予定されているN-netの沖合システムの本運用後は、MOWLASの8番目の観測網として統合運用される。他のMOWLASの観測網と同様データの公開もなされる予定であり、可能な限り早期に地震津波即時予測への活用が期待されている。また、沿岸システムは2024年の秋から年明けにかけて敷設工事がなされ、2025年の春にはN-netの構築が完了する予定である。