The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S02. Seismometry and monitoring system

[S02] AM-2

Tue. Oct 22, 2024 10:45 AM - 12:15 PM Room D (Medium-sized Conference room 201 (2F))

chairperson:Shuhei Tsuji, Aki Ito(JAMSTEC)

11:30 AM - 11:45 AM

[S02-10] Development of a seafloor observation system for near-real-time monitoring of marine volcanic activities

*Aki Ito1, Masaru Nakano1, Tomoya Nakajima1, Satoru Tanaka1, Hajime Shiobara2, Shin Iwasaki3, Shoichi Sato3, Shigeatsu Okumura3, Makoto Yoshida3, Minemori Sato3 (1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 2. Earthquake Research Institute, the Univ. of Tokyo, 3. Hakusan Corporation)

近年、伊豆小笠原諸島などの離島や海域の火山活動と、それによる被害が社会の注目を集めている。特に、福徳岡ノ場から噴出した軽石の漂流による被害は記憶に新しい。2021年8月の噴火は日本本土にまで被害を及ぼすほど大規模なものであったにも関わらず、その予兆は殆ど知られていなかった。噴火後の活動状況も十分把握できておらず、今後の活動の動向について十分な情報は得られていない。我々は、離島や海域の火山活動をモニタし、災害予測に資する情報を社会に還元することを目的として、準リアルタイム離島および海域火山観測システムの開発を行っている。
 現在、離島や海域の火山活動をモニタする方法として、航空機や船舶、衛星での監視のほか、水中音波を用いる方法、付近の島や海底での地震観測が挙げられる。このうち、海底地震観測は海底下に広がるマグマの動きを直接的に捉えられるため、最も有効な観測方法である。特に、自己浮上式の海底地震計(OBS)は任意の場所に設置可能であり、遠洋の離島や海域の火山の観測に適している。しかし、現在の観測システムでは海底に設置した OBSを浮上させ回収するまで収録データを確認できないため、火山活動状況を即座に把握することはできない。この弱点を克服するため、現在のOBSシステムの仕様について検討を行ったところ、データ収録装置と音響通信装置のソフトウェアにわずかな改造を加えることで準リアルタイムでの活動モニタが安価に実現可能であることが判明した。
 具体的には、データ収録装置にイベントの検出とデータ解析の機能を新たに追加し、イベントリストをOBSの内部で作成する。つまり、通常はOBSの回収後に行う処理を海底で行う。また、火山性地震の活動状況をより詳しく把握するため、イベントリストには検出時刻の他にイベントの特徴量(卓越周波数、最大振幅、継続時間)を付与する。作成されたイベントリストは音響通信によって海上の船舶などに送信されるが、本システムでは簡易的な通信機能を持つ音響トランスポンダーに改良を加えた機能向上版を使用する。この音響トランスポンダーは一度に最大2000文字を送信できるため、イベントリストの取得に十分な性能を持つ。通常、海底と海上間でのデータ送受信には高価で高機能な音響モデムを使用することが多く、大量の波形データの取得を可能とするシステムも海外では既に運用されている。一方、本システムでは、火山活動モニタに必要な情報のみをイベントリストにコンパクトにまとめることで、通信量を最小限に抑えている。
 さらに、柔軟な運用を可能とするため、船舶などによるデータ回収時の滞在可能時間や音響通信を左右する海況に応じて、取得する情報をデータ量により三段階に設定している。データ量の少ないものから順に、1. 総イベント数、2. 地震の卓越周波数や最大振幅に基づく統計量、3. イベントの特徴量を記したイベントリスト、である。また、取得する情報の期間を指定可能としている。これらの機能により、海況が良い場合には詳しい情報が、海況が悪い場合でも最低限必要な情報が取得可能である。海底観測中(活動モニタ継続中)は統計量やイベントリストのみが取得可能であるが、OBS本体を後日回収することで、1〜2年間という観測期間中の連続データを用いた、より詳細な研究に活用することも可能である。