11:45 AM - 12:00 PM
[S02-11] Development of a broadband OBS for ultra-deep sea areas (UDBBOBS)
海域地震観測の技術開発では、観測周波数帯域、観測期間、観測可能エリア、信号強度範囲などを多面的に拡大することを進めている。そのひとつが、大水深の海溝軸周辺にも展開可能な超深海域(6000m以深)用の海底地震計の開発である。これは、通常の深海用観測装置の部品は、海底全体の98%をカバーできる6000m水深までが一般的な使用範囲の限界であるのを打破するものである。このような超深海域用海底地震計(UDOBS)はニッチな存在に聞こえるが、日本海溝では超深海域が数百kmの幅で海溝軸に沿って存在しており、大地震が発生する海陸プレート境界域の直上で観測できることは重要である。
1989年頃から続くUDOBS開発では、設計や部品に起因するトラブルに何度か遭遇した。最近では、2013年4月に房総半島沖の水深9200mの三重会合点で、1年程度の長期観測を目的とした新設計の超深海OBS(NUDOBS)での観測を試みた(塩原ら、日本地震学会, 2013)。このNUDOBS(15Hzセンサーを搭載)には、高圧下でのトラブルの原因となりうる樹脂モールドされた水中ケーブルと錘切り離し部を用いておらず、超深海域での観測で想定されていた問題点を無くし、機械式音響トランスポンダによって2段階で引き込まれるピンが、システム全体の設置・観測・回収の状態を制御していた。しかし、このNUDOBSの観測開始は正常な応答で確認できたが、2014年4月の回収時には応答が得られなかった。大水深ゆえ、海底から機器を回収しての原因究明が出来なかったが、水深9200mでの超高圧(ピン先端部φ14mmで1464kgf)により、引き込まれるピンが意図せずに内部へ押し込まれた可能性が原因として推定された。その対策として、2017年に開発した自律型の自己埋設型センサー方式BBOBSである NX-2G(Shiobara et al., IUGG, 2019)において、これが同様のシステム制御機構を内包していることから、引き込まれるピンの駆動機構を、ショウジロックギア(外力では絶対に動かないブレーキ機構を内蔵)を採用して改良した。なお、従来の短周期センサー型OBSの構造を踏襲し、高耐圧のセラミック/ガラス球を使用したUDOBSは既に実用化されているが、耐圧容器の内容積の制約から観測期間が短く、広帯域センサーを搭載することは困難である。
2021年、著者らは2013年のNUDOBSを元にし、現在の固体地球科学的目的に適する広帯域センサーを搭載した改良型(UDBBOBS)の開発を再開した。このセンサーは最新設計の高精度加速度センサー(203 POD-60、Silicon Audio社製)で、軽量・小型・低消費電力、かつ傾斜状態でも動作可能であることから、超深海用耐圧容器の狭い内容積での搭載に適しており、周波数範囲の下限は約0.01Hzである。内部ノイズレベルは、他社の小型速度型センサーと同等である。センサーの傾斜値は別途搭載するMEMS加速度傾斜計(電子コンパス)で計測し、後処理により上下・水平動へ変換する。本システム全体は従来のNUDOBSよりも若干コンパクトにした。2024年9月に、通常型のBBOBSなどとの長期比較試験観測を熊野灘で実施する。その後、実際に超深海域での試験運用を予定している。
1989年頃から続くUDOBS開発では、設計や部品に起因するトラブルに何度か遭遇した。最近では、2013年4月に房総半島沖の水深9200mの三重会合点で、1年程度の長期観測を目的とした新設計の超深海OBS(NUDOBS)での観測を試みた(塩原ら、日本地震学会, 2013)。このNUDOBS(15Hzセンサーを搭載)には、高圧下でのトラブルの原因となりうる樹脂モールドされた水中ケーブルと錘切り離し部を用いておらず、超深海域での観測で想定されていた問題点を無くし、機械式音響トランスポンダによって2段階で引き込まれるピンが、システム全体の設置・観測・回収の状態を制御していた。しかし、このNUDOBSの観測開始は正常な応答で確認できたが、2014年4月の回収時には応答が得られなかった。大水深ゆえ、海底から機器を回収しての原因究明が出来なかったが、水深9200mでの超高圧(ピン先端部φ14mmで1464kgf)により、引き込まれるピンが意図せずに内部へ押し込まれた可能性が原因として推定された。その対策として、2017年に開発した自律型の自己埋設型センサー方式BBOBSである NX-2G(Shiobara et al., IUGG, 2019)において、これが同様のシステム制御機構を内包していることから、引き込まれるピンの駆動機構を、ショウジロックギア(外力では絶対に動かないブレーキ機構を内蔵)を採用して改良した。なお、従来の短周期センサー型OBSの構造を踏襲し、高耐圧のセラミック/ガラス球を使用したUDOBSは既に実用化されているが、耐圧容器の内容積の制約から観測期間が短く、広帯域センサーを搭載することは困難である。
2021年、著者らは2013年のNUDOBSを元にし、現在の固体地球科学的目的に適する広帯域センサーを搭載した改良型(UDBBOBS)の開発を再開した。このセンサーは最新設計の高精度加速度センサー(203 POD-60、Silicon Audio社製)で、軽量・小型・低消費電力、かつ傾斜状態でも動作可能であることから、超深海用耐圧容器の狭い内容積での搭載に適しており、周波数範囲の下限は約0.01Hzである。内部ノイズレベルは、他社の小型速度型センサーと同等である。センサーの傾斜値は別途搭載するMEMS加速度傾斜計(電子コンパス)で計測し、後処理により上下・水平動へ変換する。本システム全体は従来のNUDOBSよりも若干コンパクトにした。2024年9月に、通常型のBBOBSなどとの長期比較試験観測を熊野灘で実施する。その後、実際に超深海域での試験運用を予定している。