[S02P-03] Rapid detection of seismicity using relative source location method with seismic amplitudes
一般的に、地震の震源決定にはP波やS波の到達時刻が用いられる。到達時が読み取れるならばそれを用いた震源決定を行えばよいが、地震活動が非常に活発な時や、Tectonic tremorといったそもそも観測波形が一般的な地震と大きく異なるような場合は到達時の読み取りが困難であり、一般的な震源決定が不可能となる。地震波振幅を用いた震源決定手法(ASL法、例えばBattaglia and Aki, 2003)はこのような到達時を読み取れない地震波イベントに有効であり、また、アレイ観測のような特殊な観測も必要としない。しかし、地震波振幅を用いるので観測点のサイト特性の推定精度が震源位置の精度に大きく影響する。そのような問題に対してOgiso and Yomogida (2021)は地震波の振幅比を用いた相対震源決定手法を提案し、ASL法の有効性を生かすとともに相対震源決定手法を用いることで震源の推定精度も到達時を用いた震源決定手法に比肩しうることを示した。この相対震源決定手法では基本的に地震波イベントの到達時を必要としないため、到達時の検測が困難である活発な地震活動の概略を把握するのに有効であると考えられる。本発表では、Ogiso and Yomogida (2021)の相対震源決定手法を地震活動が活発な際の連続波形に適用し、地震活動の早期把握の可能性について検討する。
地震活動が活発な事例として、ここでは2008年9月29日の雌阿寒岳における火山性地震の多発例を取り上げる。この日、雌阿寒岳では14:11頃に継続時間が約4分程度の火山性微動が発生したのち火山性地震が多発し、札幌管区気象台による1日の地震回数は788回であった。本研究では、火山性微動発生後の9月29日14:20~16:00の連続波形を使用した。基準とした地震は2008年11月7日に発生したもので、震源は到達時より決定した。 火口周辺の5観測点の上下動成分を使用し、1次元速度・減衰構造を仮定した。地震のオリジンタイムを仮定して、基準地震の走時を考慮した5秒のタイムウィンドウで各観測点の波形を切り出し、そのタイムウィンドウ内のRoot mean square (RMS)振幅を計算する。そして、基準地震における各観測点のRMS振幅との比をとり、基準地震と対象とする火山性地震が各観測点との震源距離より十分近いとの仮定のもとで線形方程式を導いて、通常の最小二乗法で基準地震に対する相対的な位置と震源における振幅比を推定する。仮定したオリジンタイムを2秒ずつずらしてこの計算を連続的に行い、連続的に得られた震源振幅の比が極大となる時刻の震源位置をピックアップした。
震源振幅が基準イベントの0.5倍以上という条件で個数を数えたところ、札幌管区気象台による手動検測で決められた震源は34個のところ、本手法では約3倍の108個の震源を推定することができた。手動検測の震源分布と比較すると若干ばらつきが大きいものの、地震活動の早期把握という観点からみれば十分な精度で震源分布が得られたものと考えている。本手法は通常の最小二乗法を使用しているため、計算負荷はグリッドサーチ等を使用するASL法より極めて小さく、一定時間の波形バッファが必要であることを除けば準リアルタイム的に適用することも可能であろう。
火山性地震は一般的に活動域が狭いため、ひとつの基準地震で活動域の概略を把握することが可能と思われるが、大地震後の余震活動等では活動域が広く、複数の基準地震を用いる等の工夫が必要であろう。今後はそのような改修を実施し、本手法の適用範囲の拡大に取り組んでいきたい。
謝辞
本研究では札幌管区気象台が設置・運用している雌阿寒岳の火山観測網における地震波形データを使用しました。
地震活動が活発な事例として、ここでは2008年9月29日の雌阿寒岳における火山性地震の多発例を取り上げる。この日、雌阿寒岳では14:11頃に継続時間が約4分程度の火山性微動が発生したのち火山性地震が多発し、札幌管区気象台による1日の地震回数は788回であった。本研究では、火山性微動発生後の9月29日14:20~16:00の連続波形を使用した。基準とした地震は2008年11月7日に発生したもので、震源は到達時より決定した。 火口周辺の5観測点の上下動成分を使用し、1次元速度・減衰構造を仮定した。地震のオリジンタイムを仮定して、基準地震の走時を考慮した5秒のタイムウィンドウで各観測点の波形を切り出し、そのタイムウィンドウ内のRoot mean square (RMS)振幅を計算する。そして、基準地震における各観測点のRMS振幅との比をとり、基準地震と対象とする火山性地震が各観測点との震源距離より十分近いとの仮定のもとで線形方程式を導いて、通常の最小二乗法で基準地震に対する相対的な位置と震源における振幅比を推定する。仮定したオリジンタイムを2秒ずつずらしてこの計算を連続的に行い、連続的に得られた震源振幅の比が極大となる時刻の震源位置をピックアップした。
震源振幅が基準イベントの0.5倍以上という条件で個数を数えたところ、札幌管区気象台による手動検測で決められた震源は34個のところ、本手法では約3倍の108個の震源を推定することができた。手動検測の震源分布と比較すると若干ばらつきが大きいものの、地震活動の早期把握という観点からみれば十分な精度で震源分布が得られたものと考えている。本手法は通常の最小二乗法を使用しているため、計算負荷はグリッドサーチ等を使用するASL法より極めて小さく、一定時間の波形バッファが必要であることを除けば準リアルタイム的に適用することも可能であろう。
火山性地震は一般的に活動域が狭いため、ひとつの基準地震で活動域の概略を把握することが可能と思われるが、大地震後の余震活動等では活動域が広く、複数の基準地震を用いる等の工夫が必要であろう。今後はそのような改修を実施し、本手法の適用範囲の拡大に取り組んでいきたい。
謝辞
本研究では札幌管区気象台が設置・運用している雌阿寒岳の火山観測網における地震波形データを使用しました。