日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

[S09P] PM-P

2024年10月21日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S09P-15] カスカディア沈み込み帯北部における海底地震、海底圧力計観測

*尾鼻 浩一郎1、塩原 肇2、杉岡 裕子3、高橋 努1、Riedel Michael 5、Sun Tianhaozhe 4、Schaeffer Andrew4、Douglas Karen4、Côté Michelle 4、Hobbs Tiegan4、Stacey Cooper 4、Wang Kelin4、Heesemann Martin6、Hutchinson Jesse6 (1. 海洋研究開発機構、2. 東京大学地震研究所、3. 神戸大学、4. Geological Survey of Canada、5. GEOMAR、6. Ocean Networks Canada)

北米太平洋岸のカスカディア沈み込み帯では、Juan de Fucaプレートが北米プレートの下に沈み込んでおり、1700年に発生したM9の地震(Satake et al. 2003)を始め、巨大地震が繰り返し発生してきたことが知られている。カスカディア沈み込み帯では、プレート境界の固着域が海溝軸付近まで広がっている可能性が示されている(e.g. Lindsey et al. 2021)が、1700年の地震の震源域北端に位置するカナダ・バンクーバー島沖南部で行われた海底地震計(OBS)を用いた機動的な観測(Obana et al. 2015)や、海底掘削孔内での地震・地殻変動観測(McGuire et al. 2018)では、「普通の地震」だけでなく「スロー地震」活動もプレート境界浅部では観測されていない。一方、Juan de Fucaプレートと横ずれ断層であるNootka Faultで接するExplorerプレートが北米プレートの下に沈み込んでいるバンクーバー島沖北部では、バンクーバー島沖南部に比べて、活発な地震活動が発生している。
カスカディア沈み込み帯北端部の構造や地震活動は、巨大地震震源域の広がりを想定する上でも重要な情報である。「普通の地震」や「スロー地震」が全く観測されない、バンクーバー島沖南部では、プレート境界線部が強く固着しており、歪みが全く解放されることなく蓄積されている可能性が考えられる。一方で、海底圧力計(OBP)によるアレイ観測により、「普通の地震」や「スロー地震」と異なる「速いスロー地震」の存在が報告されている(Fukao et al. 2021)。カスカディアでこれまで行われてきた観測は、「普通の地震」や「スロー地震」を念頭に置いたものであったが、プレート境界浅部における歪みの蓄積解放過程を理解するためには、「速いスロー地震」を含む様々な時定数を持つ多様な滑り現象を考えることが必要である。また、比較的活発な地震活動が見られるバンクーバー島沖北部では、これまで海域の地震観測は十分行われておらず、詳細な震源分布の把握は、Explorerプレートの沈み込み形態を把握する上でも重要である。そこで、2022年から2024年にかけて、「速いスロー地震」に着目したOBS、OBPによるアレイ観測をバンクーバー島沖南部で行うとともに、バンクーバー島沖北部では、OBSによる海底地震観測を実施した。
OBS、OBPの設置は、2022年9月から10月に行われたドイツの調査船SonneによるSO294航海で実施した。SO294航海においては、海底地形調査や、エアガン、OBS、ストリーマーを用いた反射法ならびに屈折法構造探査、OBMTによる電磁気構造探査、堆積物サンプリングなども行われている。バンクーバー島沖南部におけるOBS、OBPのアレイ観測は、Ocean Networks Canada (ONC)によるケーブル式の海底観測点の周囲で実施し、OBS9台とOBP6台を設置した。また、バンクーバー島沖北部における海底地震観測のため、OBS11台を設置した。OBSとOBPの回収はカナダ沿岸警備隊の調査船John P. Tullyにより、2023年6月から7月(OBS)ならびに2024年7月(OBP)に行った。2023年に回収したOBSについては、Canada National Seismograph Network (CNSN)ならびにONCによる定常観測データと統合したデータセットを作成した上で、検測作業ならびに震源決定を進めており、バンクーバー島沖北部では、海陸境界付近の地震活動が捉えられている。
謝辞:本研究はJSPS科学研究費JP23K22609の助成を受けたものです。