[S09P-16] Microseismic activity around East Ongul Island, East Antarctica based on seismic array observations
南極昭和基地やリュツォ・ホルム湾沿岸部では長年地震観測が行われてきた。南極域で発生する地震や世界各地で発生する遠地地震に加えて,東オングル島周辺部の局地的な地震が記録されている(Kanao and Kaminuma, 2006)。一方雪氷圏では氷震や微動も発生し,昭和基地周辺においては潮汐や氷山の移動によって発生していると報告されている(Murayama et al., 2017; Tanaka et al., 2019)。また氷震は氷河の流動や氷の温度変化によっても引き起こされると考えられているため,氷震活動のモニタリングは、地球温暖化などの環境変動の指標として重要である。これらの震動は遠地地震と比べると規模が小さいため,観測点間隔が広い既存の地震観測網のみではその発生の検出や震源位置の推定を行うことが難しい。そこで著者らは、第58次南極観測隊において東オングル島内の二箇所に地震計アレイ観測点(Array A, B)を設置した。
単点で設置されている既存観測点と異なり、密に設置されたアレイ観測点では入射する波の到来方向を推定することができる。本研究では二箇所のアレイ観測点のデータを組み合わせることで、従来の観測データでは推定することのできなかった微小震動(以下,イベント)を検出しその位置推定を試みた。イベント検出にはSTA/LTAを用いた。3成分地震計を設置したArray Aのデータを用いて各イベントのparticle motionを算出した結果,到達直後に直線状の振動が見られるP波とみられるものや、P/S波を明瞭に識別できるイベントが含まれていることがわかった。遠地地震の各波の到着時刻についてはJARE Data Reportsにより報告されているが、これらのイベントの時刻には該当する遠地地震のphaseはなく,S-P時間からも東オングル島周辺で発生した地震もしくは氷震と考えられた。そこでこれらのイベントに対して,Vp=6.0km/sとなるslowness範囲でセンブランス解析(Neidel, N. S. and M. T. Taner, 1971)を行い、波の到来方向と伝播速度を推定した。両方のアレイで到来方向が推定できたイベントについては,それぞれのアレイにより定めた到来方向へ伸ばした2本の直線の交点から簡易的に震央を推定すると、オングル島周辺の主に東側に分布する傾向が見られた。一方、Array Aではparticle motionと一致する方向からの伝播が推定されるが,Array Bでは複数のslownessについてセンブランス値のピークが現れ、到来方向を一意に推定することができないケースもあった。これは空間エイリアシングによる可能性のほか,定常的なノイズの混入が大きな要因として考えられる。波の相関度合いを示すセンブランスの場合,例え小さい振幅でも観測網全体で似たような波形が記録されていれば高い相関を持ち、ゴーストの原因となる。そこで今後は、アダプティブアレイ解析によって信号の振幅を考慮しつつ波の到来方向を推定し,空間へ投影して震源位置を推定する。
謝辞:本研究はROIS-DS-JOINT(049RP2023, 040RP2024)の助成を受けたものです。記して感謝いたします。
単点で設置されている既存観測点と異なり、密に設置されたアレイ観測点では入射する波の到来方向を推定することができる。本研究では二箇所のアレイ観測点のデータを組み合わせることで、従来の観測データでは推定することのできなかった微小震動(以下,イベント)を検出しその位置推定を試みた。イベント検出にはSTA/LTAを用いた。3成分地震計を設置したArray Aのデータを用いて各イベントのparticle motionを算出した結果,到達直後に直線状の振動が見られるP波とみられるものや、P/S波を明瞭に識別できるイベントが含まれていることがわかった。遠地地震の各波の到着時刻についてはJARE Data Reportsにより報告されているが、これらのイベントの時刻には該当する遠地地震のphaseはなく,S-P時間からも東オングル島周辺で発生した地震もしくは氷震と考えられた。そこでこれらのイベントに対して,Vp=6.0km/sとなるslowness範囲でセンブランス解析(Neidel, N. S. and M. T. Taner, 1971)を行い、波の到来方向と伝播速度を推定した。両方のアレイで到来方向が推定できたイベントについては,それぞれのアレイにより定めた到来方向へ伸ばした2本の直線の交点から簡易的に震央を推定すると、オングル島周辺の主に東側に分布する傾向が見られた。一方、Array Aではparticle motionと一致する方向からの伝播が推定されるが,Array Bでは複数のslownessについてセンブランス値のピークが現れ、到来方向を一意に推定することができないケースもあった。これは空間エイリアシングによる可能性のほか,定常的なノイズの混入が大きな要因として考えられる。波の相関度合いを示すセンブランスの場合,例え小さい振幅でも観測網全体で似たような波形が記録されていれば高い相関を持ち、ゴーストの原因となる。そこで今後は、アダプティブアレイ解析によって信号の振幅を考慮しつつ波の到来方向を推定し,空間へ投影して震源位置を推定する。
謝辞:本研究はROIS-DS-JOINT(049RP2023, 040RP2024)の助成を受けたものです。記して感謝いたします。