The 2024 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 21st)

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09P] PM-P

Mon. Oct 21, 2024 5:15 PM - 6:45 PM Room P (Main Hall (2F))

[S09P-17] Detection of potential small-scale aseismic slip in the area of small repeating earthquakes

*Toshihiro IGARASHI1 (1. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)

ほぼ同じ場所で繰り返し発生する小繰り返し地震は、発生域周辺の非地震性すべりを検出できるすべりセンサーの一種とみなされる。これまでも、小繰り返し地震の情報は、沈み込むプレートの境界において、余効すべりやスロースリップイベントのような短期間の変動から巨大地震発生サイクルに伴う固着状態の変化まで、様々な時間・空間的スケールをもつすべり変化を明らかにしてきた。一方、小繰り返し地震から見積もられるすべり量は1イベントあたり概ね10 cmを超えるため、ある程度規模の大きなすべりが生じない限り、同じグループで繰り返し発生することはない。数cm程度のすべり量をもつ小規模な非地震性すべりが発生したとしても、それに対応する小繰り返し地震は発生しない可能性がある。ただし、小繰り返し地震は地震クラスターを形成している領域内で発生していることが多い。同じ領域で発生しているその他の地震もまた、小繰り返し地震と同様のすべりの影響を受けているはずである。そこで本研究では、小繰り返し地震発生域で発生する地震活動の情報を用いて、小規模な非地震性すべりが発生した可能性がある場所、期間を調査した。
 ここでは以下に示すの指標を組み合わせて調査を行った。まず、小繰り返し地震群について、基準イベントから震央距離10 km以内、10日以内に、1.異なるグループのイベントが発生、2.同じグループのイベントが繰り返し発生、あるいは、3.1と2の両方が発生、したかを調査した。3.は、概ね10 cm以上のすべり量をもつ大きなすべりが発生したことを示す。2.は、3.と同様にすべり量は大きいが、その範囲は狭いことを示唆している。ただし、バースト的な活動は急激な応力変化に伴う、近接領域が立て続けにすべった可能性もある。1.は、数cm程度の小さなすべりが生じたことを示唆している。ただし、偶然発生時刻が一致した可能性も否定はできない。そこで、領域を緯度、経度とも0.1°ごとに区切り、各領域内で、 4.M5以上の地震が発生、あるいは、5.地震活動の活発化、したかを小繰り返し地震発生域で調査した。これらの指標は、比較的規模の大きい地震が発生する前の前駆すべりあるいは、直後の余効すべりの発生、あるいは、プレート間すべり速度が増加した可能性を示す指標となりうる。したがって、これらの活動が小繰り返し地震発生時期に発生していた場合は、非地震性すべりが発生している可能性が高い。本解析では、気象庁の一元化震源カタログに報告されている1989年1月から2024年7月までに発生したM2.0以上の地震を用いた。小繰り返し地震は、五十嵐(2020)に基づき、日本列島及びその周辺海域に展開されている地震観測網も用いて検出された結果を使用した。
 解析の結果、プレート境界型地震発生域の多くで、複数の小繰り返し地震群が時空間的に近接して発生した期間が存在することが明らかとなった。小規模な非地震性すべりの発生区間は、より規模の大きいすべりの発生区間が近接している場合、厳密に区別することが難しいが、解析期間全体では、太平洋プレートで54領域、216区間、フィリピン海プレートでは、36領域、110区間で発生したことが認められた。2024年1月以降に発生した活動を見ると、太平洋プレートでは、2月に三陸沖(39.5°N, 143.5°E)、3月に福島県沖(37.1°N, 141.4°E)、5月に八丈島東方沖(33.1°N, 141.8°E)で小規模な非地震性すべりがあった可能性が示唆された。特に、3月の福島県沖の活動は、3月17日にM5.4の地震が発生しており、小規模な余効すべりが生じた可能性が高い。フィリピン海プレートでは、4月に奄美大島北東沖(29.3°N, 130.5°E)、5月に種子島南東沖(29.9°N, 131.2°E)でその可能性が示唆された。なお、2月から3月にかけて房総半島沖で発生したスロースリップイベントは、本解析では規模の大きい非地震性すべりが発生した区間として検出された。房総半島沖では2000年以降6回スロースリップイベントが発生しているが、本解析で規模の大きなすべりとして検出された区間は、今回と2007年のみである。他の4回は小規模なすべりとして検出された。一方、本解析結果は測地データでは検出されていない、2002年5月、2009年12月、2011年3月、2023年9月にも小規模なすべりの発生を示唆した。本解析は、カタログが入手でき次第比較的簡単に行い、すぐさま地図上に表せる。大小様々な規模をもつ非地震性すべりの発生を調査する足がかりとして役立つことが期待できる。