日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

[S15P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S15P-02] 2023年トルコ南東部の地震における地表地震断層と建物被害の関係(その2)

*門馬 直一1、中村 洋光1、内藤 昌平1、藤原 広行1、山田 哲也2、佐久間 理恵2 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所、2. (株)パスコ)

2023年2月6日、トルコ南東部でMw7.8の地震が発生し、Reitman et al. (2023)によると、この地震による地表地震断層がGobasiからIslahiyeにかけて約200km、KirikhanからAntakyaにかけて約40km出現したと考えられる。一方、門馬・他(2019)は、2016年熊本地震における地表地震断層と建物倒壊率の関係を解析し、益城町では地表地震断層から100mまでの範囲における木造建物の倒壊率が非常に高いことを明らかにした。本研究では、トルコ南東部の地震における地表地震断層と建物被害の関係を調査するため、地震発生前後に撮影された高解像衛星画像から、地表地震断層近傍の建物被害程度を判読し、地表地震断層と建物被害の関係を検討した。建物被害判読に用いる衛星画像は、地上解像度50cmのPleiadesの画像とし、Sekeroba地区(約61km2)、Islahiye地区(約28 km2)、Kirikhan地区(約28 km2)及びAntakya地区(約54 km2)の4地区の、Reitman et al. (2023)の地表地震断層のトレースの左右1km程度の範囲について、地震発生前後の画像を用いて被害判読を行った。判読方法は、地震発生前後の画像を目視により比較し、5つの被害区分(区分1「画像からは被害が確認できない」、区分2「建物は傾いているが原型をとどめている」、区分3「建物の一部が崩れ落ちている」、区分4「建物の半分以上が崩れ落ちている」、区分5「建物が完全に崩れ落ちて原型をとどめていない、または完全に倒壊している」)に分類した。Sekeroba地区において、判読した棟数は7,937棟で、このうち区分5の建物は549棟(判読した全棟数の約7%)、区分4は294棟(約4%)、区分3は1,127棟(約14%)である。建物倒壊に相当する区分5の空間分布については、地表地震断層に沿って連続して集中的に分布する領域と地表地震断層から離れた市街地に広く分布する領域がある。この地表地震断層に沿って連続して集中的に分布する領域に限定し、地表地震断層から水平距離別の区分5の占める割合を調べたところ、地表地震断層から100m以内では約11%であり、判読した全棟数に占める割合よりも高いものであった。Islahiye地区における判読した棟数は5,218棟で、このうち区分5の建物は196棟(判読した全棟数の約4%)、区分4は21棟(約0.4%)、区分3は116棟(約2%)であり、区分5の比率はSekeroba地区の約半分である。建物倒壊に相当する区分5の空間分布は、広く散在して分布する。地表地震断層と建物被害の関係を見ると、地表地震断層近傍には数は少ないものの建物があるが、これらの建物は全て被害区分1の建物で、被害区分5の建物はない。Kirikhan地区における判読した棟数は12,017 棟で、このうち区分5の建物は476棟(判読した全棟数の約4%)、区分4は95棟(約1%)、区分3は662棟(約6%)であり、区分5の比率はSekeroba地区の約半分である。建物倒壊に相当する区分5の空間分布は、広く分散して分布するものの、一部集中して分布するところもある。地表地震断層と建物被害の関係を見ると、地表地震断層近傍には建物は極めて少なく、またこれら建物は全て被害区分1の建物で、被害区分5の建物はない。Antakya地区における判読した棟数は31,650棟で、このうち区分5の建物は2,001棟(判読した全棟数の約6%)、区分4は170棟(約1%)、区分3は368棟(約1%)であり、区分5の比率はSekeroba地区のほぼ同じである。Antakya地区では地表地震断層が確認されていないが、今回の地震で特に建物被害が大きかった地区のひとつである。被害区分5の空間分布を見ると、特にAntakyaの中心市街地付近に集中して分布しており、線上に連続して分布する傾向は読み取れない。検討の結果から、Sekeroba地区では地表地震断層の近傍では倒壊率が高い傾向があり、地表地震断層が建物被害に影響を与えた可能性がある。一方,Islahiye地区及びKirikhan地区では、地表地震断層近傍の倒壊建物は確認できないが、地表地震断層近傍の建物数自体がSekeroba地区と比べると圧倒的に少ないため、データの解釈には注意が必要と考える。謝辞:科学技術研究費22K21372「2023年トルコ南部の地震と災害に関する総合調査」の一環で実施した。引用文献門馬直一・藤原広行・中村洋光・佐伯琢磨・内藤昌平・下村博之・山田哲也:平成28年熊本地震における地表地震断層近傍の建物被害、2019年地震工学会大会梗概集Reitman et al. (2023)Preliminary fault rupture mapping of the 2023 M7.8 and M7.5 Türkiye Earthquakes (https://doi.org/10.5066/P985I7U2)