[S15P-09] Amplitude Correction at Long Distances through Integration of Hybrid Method and Ground Motion Prediction Equations
面的な地震リスク評価では、広域も含めた適切な地震動評価が必要になる。広域での広帯域地震動の評価では、統計的グリーン関数法による短周期成分と差分法等により算出された長周期成分を組み合わせるハイブリッド合成法がよく用いられている。一方で、地震調査研究推進本部の「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)」に準じたハイブリッド合成法による広帯域地震動評価を震源距離70km以上の遠方まで適用すると、観測記録と比較して周期1秒以下の振幅が過小となることが指摘されている(Iwaki et al., 2016, BSSA)。そこで、前田ほか(2023, SSJ)では、ハイブリッド合成法(あるいは、統計的グリーン関数法)による計算波形の周期特性を地震動予測式による予測値に適合させる補正手法を提案した。本提案手法では、面的に計算された多数の時刻歴波形を対象として、断層距離範囲ごとに観測点をグルーピングし、観測点グループ内での計算値(ハイブリッド合成法)の平均値を地震動予測式による予測値と整合させる方法を採用している。具体的には、ハイブリッド合成法と森川ほか(2021,地震工学会)の地震動予測式(MF式)による加速度応答スペクトルの比をハイブリッド合成法によるフーリエスペクトルに乗じ、フーリエ逆変換により補正波形を求める操作を、補正波形の応答スペクトルがMF式に整合するまで繰り返している。整合の判定は、告示スペクトルへの適合波の作成手法を参考に設定した4つの適合条件に基づいており、それぞれ、最小応答スペクトル比、スペクトル強度比、スペクトル比の変動係数、スペクトル比の平均値誤差である。本手法を南海トラフ沿いの海溝型巨大地震を対象としたハイブリッド合成法波形に適用した事例では、適合条件のうち、スペクトル強度比に関する条件を満たすために補正手順の繰り返しを要している傾向が認められたものの、遠方での短周期成分の過小評価が解消されていることが確認できた。一方で、断層距離範囲の幅の採り方により補正後の地震動分布に違いが生じることも確認できた。また、断層面の形状とハイブリッド合成法の計算対象領域との関係から、断層距離が大きい観測点グループは、狭い範囲内に分布する観測点のみで構成されることとなり、そうした観測点グループに対して算出した平均値を地震動予測式の平均値と整合させることの妥当性についても留意する必要があることが分かった。謝辞:本研究は文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の一環として行われた。