日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

特別セッション » S22. 令和6年能登半島地震

[S22P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S22P-12] 令和6年能登半島地震余震域南西端部に位置するK-NET富来観測点とKiK-net富来観測点における地震動の比較

*鈴木 亘1、久保 久彦1、木村 武志1 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所)

令和6年能登半島地震(以下、本震)では、震央の南西約60 km、余震域の南西端近くに位置するK-NET富来(ISK006)観測点において、K-NET、KiK-netで最大となる計測震度6.6と三成分合成最大加速度(以下、PGA3)2,828 galを記録した。K-NET富来の北東約4 kmのKiK-net富来(ISKH04)観測点の地表記録は計測震度が5.9、PGA3が1,221 galと大振幅ではあるものの、K-NET富来と比較すると震度で2階級小さく、PGA3で1/2以下となる。2024年1月6日23時20分に余震域西端域で発生した余震(以下、M4.3余震)では、M4.3ながらK-NET富来で計測震度5.6、PGA3 1,493 galを記録したところ、KiK-net富来ではそれぞれ3.2、47 galであった。一方で、本震以前の活動として本震震央周辺で2023年5月5日に発生したM6.5の石川県能登地方の地震では、計測震度、PGA3ともK-NET富来とKiK-net富来で同程度であった。また余震域南西端域で発生した地震であっても2024年1月16日18時42分M4.8の余震ではKiK-net富来が計測震度で0.8、PGA3で約1.5倍大きく、常にK-NET富来の地震動が特別に大きいという訳ではない。本研究ではK-NET富来とKiK-net富来で観測された地震動記録を比較し、その特徴について考察を行う。
本震においてK-NET富来ではEW成分が著しく大きい(NS成分の最大振幅が約1,500 gal、EW成分が約2,700 gal)一方、KiK-net富来ではNS成分が約620 gal、EW成分が約480 galと成分比でも異なる特徴を示す。NS成分の加速度波形を比較すると、NS成分についてはP波到達後の約45秒間は振幅とフェーズの特徴がK-NET富来とKiK-net富来で比較的似通っており、その後K-NET富来で大振幅が記録される。EW成分ではP波到達約35秒後とNS成分より早く卓越周期や振幅に差異が現れ、45秒後以降ではK-NET富来に見られる波群の振幅は2,600 gal以上に増大しKiK-net富来の波群の6倍程度に達する。このようなK-NET富来でEW成分がNS成分に比べて著しく大きい傾向はM4.3余震でも見られる。加速度振幅スペクトルを見るとKiK-net富来では卓越周期の判別は難しいが、K-NET富来では本震、M4.3余震とも0.2秒付近が卓越しておりKiK-net富来のスペクトルレベル全体を上回っていることが確認された。前述したKiK-net富来の計測震度やPGA3がK-NET富来と同等もしくは上回る地震では、K-NET富来での0.2秒付近の卓越も見られるが、KiK-net富来の0.5秒から1秒程度の周期帯域のスペクトルレベルがK-NET富来の0.2秒帯域と同等かそれ以上である。両観測点での卓越周期は直下の地下構造に起因すると考えられる。当然ながら次段落で述べるように両観測点近傍で発生した地震では震央に近い観測点の方でPGA3が大きい傾向が見られるが、各観測点に入射する地震動の周期特性が卓越周期に近いかどうかもK-NET富来とKiK-net富来の振幅の違いに反映されている可能性がある。
2024年1月に発生した地震について、K-NET富来とKiK-net富来でのPGA3の差分を各地震の震央に対して描画した(図1)。余震域南西端部に位置するK-NET富来とKiK-net富来の周辺では地震活動が活発であり、それらの地震では基本的に震央から近い観測点でPGA3が大きい結果となった。ただしKiK-net富来に近いもののK-NET富来でPGA3が大きい地震は、逆のパターンの地震よりも多く見られる。能登半島の中央部や能登半島沖の余震ではKiK-net富来の方が大きい場合が多く、伝播距離が長くなるとK-NET富来で卓越する0.2秒程度の短周期成分が減衰することが理由として考えられる。しかしながら本震震央付近での余震ではK-NET富来が大きいという逆の特徴が見られ興味深い。今後は解析対象とする地震を増やすとともに、各地震による地震動の周期特性の分析を進め、K-NET富来とKiK-net富来で観測された地震動の理解を深めることを目指す。