[S22P-13] 令和6年能登半島地震における液状化等の被害と地盤増幅特性
1.はじめに
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、北陸地方(福井・石川・富山・新潟)の広範囲において建物被害や液状化被害が数多く確認された。中でも液状化は同一地点・地域で繰り返し発生する災害であり、液状化発生地点を調査・把握することは、将来の液状化被害を予測および軽減する上で極めて重要である。筆者は、液状化被害の即時推定の高精度化を目指し、これまでに平成23年東北地方太平洋沖地震をはじめとして、液状化発生地点の情報を可能な限り収集し、その地点の地盤・地形情報と、推定される揺れの強さ(震度等)との関係を検討した上で、液状化発生確率の検討を行なってきている。今回の地震においても、液状化被害地点情報の収集等の調査を行った。また、建物被害(倒壊・全壊・半壊等)調査の結果のうち液状化被害の割合の検討を行うため、地盤構造(地盤増幅度)の面的な調査方法として微動アレイ探査(小アレイ)を実施した。
2.液状化被害地点と微動アレイ探査(小アレイ)の概要
液状化調査は、2024年1月6日~5月10日のうちの20日間(令和6年6月末時点)で、上記4県において実施した。今回の調査において現時点における液状化が発生した一番震源から遠い地点は、西(南西)側は福井県坂井市の福井港、東(北東)側は新潟市中央区新潟西港周辺である。両地点とも震央から約170~180km程度離れており、約350kmにおよぶ広範囲で確認されている。現地調査を効率的に実施するための準備として、自治体の地震被害情報やWEBおよびSNSに掲載された液状化関連情報等を集約し、過去の液状化履歴情報や防災科研の地震ハザードステーション(J-SHIS)で公開されている微地形区分、国土地理院の航空写真等から噴砂等の液状化が疑われる地点等をデータベース化した上で現地調査を行った。微動アレイ探査(小アレイ)は、主に半径60cmの極小アレイと、半径10~15m程度の三角アレイの組み合わせとし、観測時間は15分以上、サンプリング周波数は200Hzで実施した。輪島市・珠洲市を中心として、令和6年5月13日~5月31日にかけて約250箇所で観測を行い、既往の100箇所の観測結果とあわせて、S波速度構造、AVS30に基づく最大速度増幅率、H/Vスペクトル比等を求めた。
3.液状化地点の分布の特徴
液状化被害地点の調査結果を約250mメッシュ(4分の1地域メッシュ)に反映した結果の一部(石川・富山)を微地形区分および推計震度分布と比較した図を示す。現時点では、4県34市町村で被害が確認され、総計2114箇所(メッシュ)となっており、能登半島北部の6市町で約半分を占めている。市町村別では、七尾市が最も多く398箇所、珠洲市が217箇所、新潟市が216箇所となっている。また、液状化被害が顕著であった新潟市や内灘町をはじめとする能登半島北部地域以外の推計震度のほとんどが5弱~5強程度であり、これまでの地震の液状化被害と比べると比較的小さな震度で液状化が発生していることがうかがえる。特に金沢市、内灘町、かほく市および新潟市西区(寺尾・坂井輪・大野地区)にかけての砂丘の後背低地部においては、噴砂量も多く住宅が大きく傾いたり沈下したりする等の甚大な被害を確認した。震度が比較的小さくても被害が大きかった理由として、例えば、熊本地震(Mj7.3)や兵庫県南部地震(Mj7.3)と比べるとマグニチュードが大きな地震(Mj7.6)であったため、地震動の継続時間の長さと日本海側特有の砂多く存在する地盤が影響した可能性が高いと考える。今回の地震における液状化地点は、1964年の新潟地震や、1993年および2007年能登半島地震、1893年濃尾地震等の既往の液状化被害が確認された地震の液状化地点と概ね同じ場所で確認されていることから再液状化した可能性が高い。
4.微動アレイ探査による推定S波速度構造の特徴
建物被害と液状化被害の双方が確認された輪島市(輪島市中心部)と珠洲市(飯田・正院地区)の低地・台地部において、概ね250mメッシュ間隔にて小アレイ観測を行い、工学的基盤(Vs400程度)までのS波速度構造およびAVS30やH/Vスペクトル比を求めた。その結果、輪島市の中心部ではJ-SHISのAVS30と比較すると、特に建物被害が集中している鳳至・河井地区では小さくなっており、最大速度増幅率で倍程度大きくなる地点も確認できる。微動探査と近隣のボーリングデータから推定されたS波速度構造によると、河合町のビルが転倒した地点周辺では、軟弱な沖積層が40m程度以上、最大速度増幅率もVs400を工学的基盤とした場合2.5~3倍程度となっており、輪島市内で最も揺れが大きかった地域であった可能性が高い。
5.まとめ
今後、液状化地点情報や建物被害と微動アレイ探査とボーリングデータ等地質情報から作成する地盤モデルを構築し、液状化ハザードマップおよび液状化発生率の高度化の検討、および建物被害と地盤増幅度の関係を検討する予定である。
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、北陸地方(福井・石川・富山・新潟)の広範囲において建物被害や液状化被害が数多く確認された。中でも液状化は同一地点・地域で繰り返し発生する災害であり、液状化発生地点を調査・把握することは、将来の液状化被害を予測および軽減する上で極めて重要である。筆者は、液状化被害の即時推定の高精度化を目指し、これまでに平成23年東北地方太平洋沖地震をはじめとして、液状化発生地点の情報を可能な限り収集し、その地点の地盤・地形情報と、推定される揺れの強さ(震度等)との関係を検討した上で、液状化発生確率の検討を行なってきている。今回の地震においても、液状化被害地点情報の収集等の調査を行った。また、建物被害(倒壊・全壊・半壊等)調査の結果のうち液状化被害の割合の検討を行うため、地盤構造(地盤増幅度)の面的な調査方法として微動アレイ探査(小アレイ)を実施した。
2.液状化被害地点と微動アレイ探査(小アレイ)の概要
液状化調査は、2024年1月6日~5月10日のうちの20日間(令和6年6月末時点)で、上記4県において実施した。今回の調査において現時点における液状化が発生した一番震源から遠い地点は、西(南西)側は福井県坂井市の福井港、東(北東)側は新潟市中央区新潟西港周辺である。両地点とも震央から約170~180km程度離れており、約350kmにおよぶ広範囲で確認されている。現地調査を効率的に実施するための準備として、自治体の地震被害情報やWEBおよびSNSに掲載された液状化関連情報等を集約し、過去の液状化履歴情報や防災科研の地震ハザードステーション(J-SHIS)で公開されている微地形区分、国土地理院の航空写真等から噴砂等の液状化が疑われる地点等をデータベース化した上で現地調査を行った。微動アレイ探査(小アレイ)は、主に半径60cmの極小アレイと、半径10~15m程度の三角アレイの組み合わせとし、観測時間は15分以上、サンプリング周波数は200Hzで実施した。輪島市・珠洲市を中心として、令和6年5月13日~5月31日にかけて約250箇所で観測を行い、既往の100箇所の観測結果とあわせて、S波速度構造、AVS30に基づく最大速度増幅率、H/Vスペクトル比等を求めた。
3.液状化地点の分布の特徴
液状化被害地点の調査結果を約250mメッシュ(4分の1地域メッシュ)に反映した結果の一部(石川・富山)を微地形区分および推計震度分布と比較した図を示す。現時点では、4県34市町村で被害が確認され、総計2114箇所(メッシュ)となっており、能登半島北部の6市町で約半分を占めている。市町村別では、七尾市が最も多く398箇所、珠洲市が217箇所、新潟市が216箇所となっている。また、液状化被害が顕著であった新潟市や内灘町をはじめとする能登半島北部地域以外の推計震度のほとんどが5弱~5強程度であり、これまでの地震の液状化被害と比べると比較的小さな震度で液状化が発生していることがうかがえる。特に金沢市、内灘町、かほく市および新潟市西区(寺尾・坂井輪・大野地区)にかけての砂丘の後背低地部においては、噴砂量も多く住宅が大きく傾いたり沈下したりする等の甚大な被害を確認した。震度が比較的小さくても被害が大きかった理由として、例えば、熊本地震(Mj7.3)や兵庫県南部地震(Mj7.3)と比べるとマグニチュードが大きな地震(Mj7.6)であったため、地震動の継続時間の長さと日本海側特有の砂多く存在する地盤が影響した可能性が高いと考える。今回の地震における液状化地点は、1964年の新潟地震や、1993年および2007年能登半島地震、1893年濃尾地震等の既往の液状化被害が確認された地震の液状化地点と概ね同じ場所で確認されていることから再液状化した可能性が高い。
4.微動アレイ探査による推定S波速度構造の特徴
建物被害と液状化被害の双方が確認された輪島市(輪島市中心部)と珠洲市(飯田・正院地区)の低地・台地部において、概ね250mメッシュ間隔にて小アレイ観測を行い、工学的基盤(Vs400程度)までのS波速度構造およびAVS30やH/Vスペクトル比を求めた。その結果、輪島市の中心部ではJ-SHISのAVS30と比較すると、特に建物被害が集中している鳳至・河井地区では小さくなっており、最大速度増幅率で倍程度大きくなる地点も確認できる。微動探査と近隣のボーリングデータから推定されたS波速度構造によると、河合町のビルが転倒した地点周辺では、軟弱な沖積層が40m程度以上、最大速度増幅率もVs400を工学的基盤とした場合2.5~3倍程度となっており、輪島市内で最も揺れが大きかった地域であった可能性が高い。
5.まとめ
今後、液状化地点情報や建物被害と微動アレイ探査とボーリングデータ等地質情報から作成する地盤モデルを構築し、液状化ハザードマップおよび液状化発生率の高度化の検討、および建物被害と地盤増幅度の関係を検討する予定である。