[S22P-15] Aerial photo interpretation of building damage caused by the 2024 Noto Peninsula earthquake
令和6年1月1日16時10分、能登半島西方沖から佐渡島西方沖にかけて伸びる活断層を震源とするマグニチュード7.6の令和6年能登半島地震が発生し、輪島市門前町走出及び志賀町香能で震度7が観測された。この地震により建物の倒壊が相次ぐとともに、津波、火災、土砂災害及び液状化、地殻変動により、奥能登地域を中心に甚大な被害が発生しており、石川県全域の住家全壊棟数は8,012棟(令和6年7月23日時点)となっている。本調査は、リアルタイム地震被害推定システム(J-RISQ)(藤原ら2019,防災科研研究資料)の推定結果の検証のため、震度7~6弱を観測した輪島市、珠洲市、七尾市、志賀町、穴水町及び能登町を対象に、地震後に国土地理院が撮影した航空写真(オルソ画像:地上解像度50Cm相当)を活用し、建物被害の判読調査を行った。判読対象の建物は木造建物(住家、店舗、寺社、倉庫・納屋等)とし、非木造は判読から除外した。また、木造と非木造の見極めは、屋根の形状及び建物面積から行った。なお、非木造を除外した理由は、解像度の観点から分類が不可能であったためである。判読方法は、航空写真(オルソ画像)の目視により、5つの被害区分(被害無「航空写真からは被害が確認できない」、被害小「屋根瓦の一部が崩落している」、被害中「屋根瓦がほぼ崩落、建物の一部が崩落している」、被害大「建物の一部が層崩壊、大きく傾動している」、被害甚大「建物が完全に倒壊し原型をとどめていない」)に分類した。また、目視判読に際して、内藤らが実施した建物被害の現地調査結果(内藤ら2024,JPGU)を参考に、判読精度のキャリブレーションを行った。判読対象の6市町のうち、判読が終了した輪島市、珠洲市及び志賀町の判読結果(図1)を見ると、輪島市は、判読棟数17,540棟の内、被害甚大は172棟(判読棟数の1%)、被害大は4,218棟(24%)で、市内の各地区に広範囲に分布する。なお、火災焼失範囲は判読から除外している。被害甚大と被害大を合計した全壊相当棟数は4,390棟であり、県公表の住家全壊棟数4,032棟に比較すると10%ほど多い。珠洲市は、判読棟数8,179棟の内、被害甚大は810棟(10%)、被害大は1,775棟(22%)で、海岸沿いの低地部に広範囲に分布し、海岸沿線地区では津波による被害が発生している。全壊相当棟数は2,580棟であり、県公表住家全壊棟数1,980棟に比較して約20%多い。志賀町は、判読棟数11,644棟の内、被害甚大は10棟(0.1%)、被害大は375棟(3%)で、震度7を観測した香能地区周辺に分布し、それ以外の地区はほとんど分布しない。なお、町域の南側20%の範囲は、航空写真の撮影がされていないので判読していない。全壊相当棟数は385棟で、県公表住家全壊棟数552棟と比較すると約70%である。今後、七尾市、穴水町及び能登町の判読を行い、奥能登半島における建物被害の空間的分布を把握し、J-RISQの推定結果の検証を進める。また、これら判読した建物被害は、地震動の揺れ以外に、津波、火災、土砂災害及び液状化が原因で発生した被害も含まれていることから、原因別の建物被害分類を行い、地震動との関係を調査する。引用文献藤原他:全国を概観するリアルタイム地震被害推定・状況把握システムの開発(防災科学技術研究所研究資料432,p1-311, 2019)内藤他:令和6年能登半島地震における強震観測地点周辺の建物被害調査および被害データベース試作開発(2024,JPGU)