The 2024 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Room A

Late-Breaking Session » S23. The 2024 Hyuga-nada Earthquake and its Effects

[S23] AM-1

Tue. Oct 22, 2024 9:00 AM - 10:30 AM Room A (International Conference Hall (4F))

chairperson:Kiwamu Nishida(ERI, the university of Tokyo), Hisahiko KUBO, Yusuke Tomozawa(Kajima Technical Research Institute, Kajima Corporation)

9:15 AM - 9:30 AM

[S23-02] Tsunami observation of the earthquake in Hyuganada Sea on 8 August 2024 recorded by N-net and DONET

*Tatsuya Kubota1, Takayuki Miyoshi1, Hisahiko Kubo1, Wataru Suzuki1, Shin Aoi1, Kunugi Takashi1, Tetsuya Takeda1 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

南海トラフ沈み込み帯では,過去に1944年昭和東南海地震や1946年昭和南海地震をはじめとする巨大地震が繰り返し発生し (e.g. Ishibashi, 2004),大きな被害をもたらしてきた.近い将来においても同様の巨大地震が発生することが危惧されている (e.g. 地震調査研究推進本部, 2013).これに備えて,熊野灘と紀伊水道沖の海域にはDONET (Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis, Kaneda et al., 2015; Kawaguchi et al., 2015) が展開されてきた.一方で,巨大地震の震源域と想定される海域のうち,高知県沖から日向灘には沖合の観測網は展開されていなかった.このような背景のもと,防災科学技術研究所では,2019年より南海トラフ海底地震津波観測網 (Nankai Trough Seafloor Observation Network for Earthquakes and Tsunamis, N-net) の構築を実施してきた (Aoi et al., 2021 UT).N-netは沖合システムと沿岸システムからなる観測網で,2つのシステムのうち沖合システムの整備が2024年7月に完了し,現在,試験運用を行なっている (青井ほか, 2024 本大会).それぞれのシステムは海底ケーブルにつながれた18台の観測ノードと2台の分岐装置および終端装置で構成され,各観測ノードの中には複数の地震計や水圧計などが搭載される.2024年8月8日,宮崎県沖の日向灘のプレート境界においてMJMA 7.1の地震が発生し,沿岸では最大で宮崎港における0.5 mの津波が観測された (気象庁, 2024).N-netの沖合システムとDONETの海底水圧計も本地震に伴う津波を観測した.本発表では,試験運用中のN-netの沖合システムおよびDONETの津波記録の特徴を整理し,かつその記録を活用して日向灘の地震の津波波源分布の推定を試みる.

水圧記録に含まれる地震動や波浪などの短周期成分および潮汐変動などの長周期成分を除去するため,理論潮汐モデル (Matsumoto et al. 2000) を用いて潮汐変動成分を除去したのち,バンドパスフィルタ (100–2000 s) を適用した.震央ごく近傍の観測点では最大で3 cm程度,震央から最も離れた観測点では1 cm程度の津波が記録された.震央に最も近い観測点NAE18では,地震の前後で水圧に有意な水圧オフセットの減少 (5 hPa程度) が記録されていたが,これは海底の上下変位に起因するものと考えられる.それ以外の観測点では,水圧オフセット値に顕著な変化は見られなかった.

これらの観測された振幅が妥当なものかを評価するため,複数の機関により得られているCMT解のそれぞれについて,Wells & Coppersmith (1994) のスケーリングに基づいて矩形断層を仮定し,津波線形長波方程式を用いてフォワード計算を実施した.その結果,CMT解の水平位置の違い (20–30 km) に起因して近傍観測点での津波の到達タイミングに違いが生じたが,どの解でも観測された津波の最大振幅や津波の卓越周期がよく再現された.なかでもGlobal CMT解に基づいて計算したものが,到達タイミングをもっともよく説明した.

続いて,N-netおよびDONETの津波記録からの逆解析により,本地震によって生じた海面上下変動 (津波波源) の分布を推定した.解析の結果,ひとつの大きな隆起域 (最大隆起量 ~20 cm) が推定され,隆起域と海岸線の間にわずかな沈降域が得られた.隆起域の長軸方向 (CMT解の走向に沿った方向) の広がりは約40 km,短軸方向の広がりは約20 kmであり,この分布はGlobal CMT解から期待される海底上下変位分布と整合した.観測点NAE18における隆起量は~5 cmとなり,観測された水圧オフセット変化とおおむね対応する.陸上のGNSS観測記録にもとづいて暫定的に推定した矩形断層モデル (国土地理院, 2024) から期待される上下変位と本津波波源分布を比較すると,その隆起のピークの位置は,本モデルのほうが約10 km陸側に位置する.陸上GNSSを用いて推定した矩形断層モデルから期待される海底上下変位では,震源のごく近傍の観測点の津波のピークの到達タイミングが5–10分ほど合わないことから,この水平位置の違いは有意なものであると解釈される.本結果は,N-netの水圧計の記録から得られた震源域周辺の水圧記録が,震源断層の水平位置の推定信頼度の向上に貢献できることを示唆する.