[S23P-15] VLFE Activity in and around the Focal Area of the 2024 Hyuga-nada Earthquake
2024年8月8日に発生した日向灘の地震(M7.1)の震源域周辺では,M7.1の地震の発生後に浅部超低周波地震活動が発生した。本研究ではこの活動の時空間発展とともに,周辺域を含めた過去の活動との比較を行う. データは,防災科研の広帯域地震観測網(F-net)の記録に加えて,鹿児島大学と実施している臨時観測の記録を使用した.ここでは2003年~2024年8月の観測記録に対してAsano et al. (2015, GRL)による波形相関解析法を適用し,既知イベントと似た記録波形を持つ未知イベントを検出して位置決定した.既知イベントとしては,モーメントテンソル解を推定することが可能な地震・超低周波地震22イベントを使用した(うち,1イベントは2024年8月の超低周波地震).地震と超低周波地震との識別は,防災科研の震源カタログとの照合によって行った. 解析の結果,M7.1の地震の発生後に,日向灘を中心として北東側は足摺岬の南(宮崎県東方はるか沖)から奄美大島北東沖にかけての広い範囲で超低周波地震活動が起きていたことが分かった.地震発生直後は,M7.1の地震による後続波の振幅レベルが大きいため,それを超えるレベルの超低周波地震が検出され始めたのは8月9日0時頃であり,この9日のうちに,足摺岬の南や奄美大島北東沖を含む広い範囲で超低周波地震が検出された.これまでにこの地域で検出されてきた超低周波地震活動では,最初に活動が開始した地域から移動速度10~20km/日で活動域が拡大するマイグレーションが観測されてきた.しかし,今回の活動は短時間のうちに広い範囲で開始しており,地震時すべりによる静的応力変化や地震の揺れによる動的応力変化などよってほぼ同時にトリガーされたゆっくりすべりが,トラフ・海溝近傍で広域にあったものと推察される. このように広い範囲で活動がみられたものの,活動の推移は一様ではなく,セグメント構造も見られる.すなわち,8月9日から日向灘から足摺岬の南で活発であった活動は16日頃にはほぼ収まり,22日以降に再び活動がやや活発になるも,この時期の活動の中心は大隅半島南東沖から種子島東方沖へと移った.このことから,今回の超低周波地震活動においては,日向灘でのすべりが先行して,近接する南の超低周波地震活動域に応力集中をもたらし,ここが遅れてすべったものと考えられる.