[S23P-17] Toward monitoring of tectonic tremor occurred along the Nankai trough using N-net
2024年8月8日16時43分頃に日向灘を震源とするMJ7.1の地震(以下、日向灘の地震)が発生した。気象庁は同日の19時15分に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表し、政府は同月15日の17時まで「特別な注意の呼びかけ」を行った。防災科学技術研究所(以下、防災科研)では、陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)等のデータを用いてさまざまな地殻活動のモニタリングを実施している。2019年より高知県沖から日向灘に構築を進めてきた南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の二つのサブシステムのうち、2024年7月から沖合システムの試験運用を開始した。日向灘の地震発生時はN-netは試験運用中で、さまざまな地殻活動のモニタリングの準備を進めていた。
西南日本では、高感度地震観測網(Hi-net)のデータ解析により陸域において深部低周波微動が発見され(Obara 2002)、その活動がモニタリングされている(Maeda and Obara 2009; Obara et al. 2010)。紀伊半島沖から室戸岬沖にかけての海域においては、地震・津波観測監視システム(DONET)を用いて、エンベロープ相関法(Ide 2010; Ohta et al. 2019)により微動活動を網羅的に検出した(例えば、太田2021)。加えて、微動のエネルギーの空間分布(太田ほか 2022)や、DONETによる微動の検知能力(太田 2023)等の検討を行ってきた。また、日向灘ではHi-net及び広帯域地震観測網(F-net)のデータ解析によって超低周波地震が発生していることが明らかになっていたが(Asano et al. 2008; 2015)、自己浮上式海底地震計のデータ解析によって浅部の微動活動も明らかになっている(Yamashita et al. 2015)。これらの深部と浅部の微動は南海トラフ地震の想定震源域で発生するものであることから、その活動状況は南海トラフ地震臨時情報を発信するうえで重要な情報となり得る。防災科研では日向灘の地震後、MOWLASを活用したスロー地震のモニタリング成果を気象庁や地震調査委員会に随時報告したが、南海トラフの微動活動に対してはN-netの波形を示すにとどまっていた。本研究では、南海トラフ地震臨時情報へ貢献することも視野に早期にモニタリングを行うことを目的の一つとし、試験運用中のN-net沖合システムのデータを用いて南海トラフ浅部微動の検出と微動源の決定を試みた。
使用したデータは、N-net沖合システムの18観測点に整備された速度計3成分で、対象期間は2024年7月から8月とした。陸域および海域での微動の卓越周波数を参考に、連続波形に対して2-8Hzのバンドパスフィルタを適用し、目視によって波形を確認した。7月1日から日向灘の地震発生前には微動と思われる波形は確認できなかったが、日向灘地震の発生後に、日向灘から南海トラフ付近に設置した観測点で振幅が比較的小さいにもかかわらず継続時間の長い(1分以上)、微動と考えられる波形が確認できた。また、DONETでの微動モニタリング(太田 2021)と同様の手法を、同期間のN-net波形データに適用し、微動の検出と微動源の決定を行った。さらに、震源決定されたものに対し、既存の地震カタログと照合し、微動、地震、エアガンといった分類を行った。その結果、日向灘地震の発生後に微動が検出され、日向灘から南海トラフの海域に微動源が決定された。これらは試行的な結果であるものの、超低周波地震の解析結果や、地震波形との比較から、同領域の微動を捉えていることは確実といえる。
西南日本では、高感度地震観測網(Hi-net)のデータ解析により陸域において深部低周波微動が発見され(Obara 2002)、その活動がモニタリングされている(Maeda and Obara 2009; Obara et al. 2010)。紀伊半島沖から室戸岬沖にかけての海域においては、地震・津波観測監視システム(DONET)を用いて、エンベロープ相関法(Ide 2010; Ohta et al. 2019)により微動活動を網羅的に検出した(例えば、太田2021)。加えて、微動のエネルギーの空間分布(太田ほか 2022)や、DONETによる微動の検知能力(太田 2023)等の検討を行ってきた。また、日向灘ではHi-net及び広帯域地震観測網(F-net)のデータ解析によって超低周波地震が発生していることが明らかになっていたが(Asano et al. 2008; 2015)、自己浮上式海底地震計のデータ解析によって浅部の微動活動も明らかになっている(Yamashita et al. 2015)。これらの深部と浅部の微動は南海トラフ地震の想定震源域で発生するものであることから、その活動状況は南海トラフ地震臨時情報を発信するうえで重要な情報となり得る。防災科研では日向灘の地震後、MOWLASを活用したスロー地震のモニタリング成果を気象庁や地震調査委員会に随時報告したが、南海トラフの微動活動に対してはN-netの波形を示すにとどまっていた。本研究では、南海トラフ地震臨時情報へ貢献することも視野に早期にモニタリングを行うことを目的の一つとし、試験運用中のN-net沖合システムのデータを用いて南海トラフ浅部微動の検出と微動源の決定を試みた。
使用したデータは、N-net沖合システムの18観測点に整備された速度計3成分で、対象期間は2024年7月から8月とした。陸域および海域での微動の卓越周波数を参考に、連続波形に対して2-8Hzのバンドパスフィルタを適用し、目視によって波形を確認した。7月1日から日向灘の地震発生前には微動と思われる波形は確認できなかったが、日向灘地震の発生後に、日向灘から南海トラフ付近に設置した観測点で振幅が比較的小さいにもかかわらず継続時間の長い(1分以上)、微動と考えられる波形が確認できた。また、DONETでの微動モニタリング(太田 2021)と同様の手法を、同期間のN-net波形データに適用し、微動の検出と微動源の決定を行った。さらに、震源決定されたものに対し、既存の地震カタログと照合し、微動、地震、エアガンといった分類を行った。その結果、日向灘地震の発生後に微動が検出され、日向灘から南海トラフの海域に微動源が決定された。これらは試行的な結果であるものの、超低周波地震の解析結果や、地震波形との比較から、同領域の微動を捉えていることは確実といえる。