The 2024 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 21st)

Late-Breaking Session » S23. The 2024 Hyuga-nada Earthquake and its Effects

[S23P] PM-P

Mon. Oct 21, 2024 5:15 PM - 6:45 PM Room P (Main Hall (2F))

[S23P-18] Rapid identification of earthquake information based on three-dimensional seismic velocity structures and their utilization

*Katsuhiko SHIOMI1, Shunsuke TAKEMURA2, Makoto MATSUBARA1, Takeshi KIMURA1, Shoji SEKIGUCHI1 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience, 2. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)

南海トラフ想定震源域周辺で大地震が発生した場合,その地震の発生場所によって「南海トラフ地震臨時情報」の発表に大きな影響を与える.一方,南海トラフ海域は地下の比較的浅部に複雑な形状をしたフィリピン海プレート(PHS)が存在するため,一次元地震波速度構造(1D構造)に基づいてその震源位置や発震機構解を正確に求めることは難しい.例えば,現在ではプレート境界で発生した地震と評価されている2016年4月1日の三重県南東沖の地震(MJMA6.5)だが,通常の震源決定で用いる1D構造を用いてこの地震の震源位置を求めると,PHS上面深度よりも有意に深く求まる.これはこの海域の特徴的な地下構造に起因する.また,1D構造により求めた初動解は正断層型を示すが,1D構造では海洋モホ面をヘッドウェーブとして伝播する地震波をうまく表現できないためである(Takemura et al., 2016).これらの問題を回避するためには,三次元地震波速度構造(3D構造)を用いた震源決定並びにCMT解析の実施が不可欠である.

CMT解の推定
Takemura et al.(2020)は,西南日本周辺で発生した地震に対してJIVSM(Koketsu et al., 1992)に基づくグリーン関数を用いたCMT解析を実施することで,とりわけ海域で発生する地震の発震機構やセントロイド深さが,従来のカタログより正確に把握可能となることを示した.この成果を踏まえ,防災科研では,Takemura et al.(2020)により整備されたグリーン関数並びにCMT解析用プログラムを活用した自動処理システム整備を進めている.Hi-netシステムの震源情報を初期震源としてCMT解析を開始する.解析にはF-netの広帯域地震計記録を用いるが,一定以上の振幅を記録した観測点では速度型強震計記録に差し替える機能を加えた.また,予め用意したリストに基づき故障観測点を除去する機能,地震計及び収録装置の特性を補正する機能も追加した.さらに,1 Hzサンプリングの波形データで処理を行うことで,計算時間の大幅短縮を実現した.なお,仮運用中の現時点では,解析帯域は25~100秒に固定している.

震源位置の推定
現在,文科省委託研究「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」において,3D構造を用いた自動震源決定システムを構築している(汐見・他, 2022).本システムは,防災科研が運用する自動震源決定システムにより得られた震源情報を受信し,その情報が解析対象範囲等の計算条件に合致した場合に自動起動する.震源計算方法として,既存のPseudo-bending法(Koketsu & Sekine, 1998)により走時を逐次計算する方法のほか,予め走時表を整備し,参照する方法(例えば,関口, 2010)も採用している.3D構造として,海陸の観測データに基づくトモグラフィ解析結果(Matsubara et al., 2019)や本プロジェクトで新たに整備した速度構造モデルを用いている.計算方法や計算に用いる3D構造,計算パラメタ等に応じて独立したサブシステムを構成させることとし,各サブシステムには1台の仮想マシン(VM)を充当している.なお,2003年以降に発生した地震について,Matsubara et al.(2019)の3D構造に基づく震源再計算を行い,カタログとして整備済みのため,即時的な利用にはMatsubara et al.(2019)の3D構造を用いた結果を採用することとしている.

「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」臨時会への対応
以上の自動解析システムはいずれも整備中であるため,随所で担当者によるオペレーションを必要とするが,2024年8月8日の日向灘の地震発生後,直ちに作業に着手することで,3D構造を用いたCMT解析結果を含む臨時会資料を地震発生から1時間程度で評価検討会事務局に提出することが出来た.さらに,3D構造を用いて再決定した地震発生後1.5時間分の余震活動を背景に追記した資料に更新,こちらも臨時会開催中に提供することが出来た.
今回は平日日勤帯に発生した地震のため直ちにオペレーションに入れたが,今後,処理の自動化,安定化を早急に進める必要がある.また,能登半島地震等を踏まえ,より大きな地震が発生した場合に想定される障害等も検討し,その回避策あるいは新たなアプローチも検討する必要があると考えている.

謝辞:本研究の一部は,文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の一環として実施している.当該地域の震源決定においては,気象庁・京都大学防災研究所・高知大学・九州大学・産業技術総合研究所等の観測データを使用した.