[S23P] PM-P

[S23P-19] AIST's geodetic monitoring for Nankai Trough Earthquake Extra Information (Megathrust Earthquake Attention)

*Yuichi KITAGAWA¹, Satoshi ITABA¹, Tadafumi OCHI¹, Suguru YABE¹, Norio MATSUMOTO¹, Tsutomu KIGUCHI¹ (1. Research Institute of Earthquake and Volcano Geology, Geological Survey of Japan, AIST)

産総研では南海トラフでの巨大地震の短期・中期予測研究のために紀伊半島～四国～九州周辺に地殻変動観測のための観測点の整備を進めている．これらの観測点では，深度の異なる3つの井戸（30m，200m，600mが標準）を掘削して観測機器を設置し，地下水や歪・傾斜・地震動の観測を行っている．近年は特にプレート境界で発生する深部短期的SSEのモニタリングを重点的に実施し，今後発生すると予測される南海トラフ巨大地震に向けた準備過程の解明を目指している．産総研の観測データのうち，歪データは2020年6月より気象庁による常時監視の対象にもなっており，「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」や南海トラフ地震臨時情報の発出にも貢献している．
2024年8月8日16時42分頃に日向灘を震源とする，プレート境界型の低角逆断層メカニズムを持つM7.1（気象庁速報値）の地震が発生した．この地震を受け，気象庁は臨時の評価検討会を開催し，南海トラフ地震の想定震源域で大規模地震が発生する可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとして「南海トラフ地震臨時情報（巨大地震注意）」を発表した．産総研では，地震発生から南海トラフ地震臨時情報による特別な注意の呼びかけが終了した8月15日夜までの間，歪・水位データの確認や短期的SSEの解析等を継続的に行い，評価検討会や気象庁への情報提供を行うことによって，南海トラフ地震臨時情報の発出や南海トラフ地震関連解説情報の提供に貢献した，本発表では，今回の取り組みの概要を発表するとともに，今後の改善点などについて議論する．

日向灘の地震に対する産総研の地殻変動モニタリングの取り組み概要

2024/08/08
・地震発生・南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会（臨時）の開催通知を受けて，関連する産総研職員の緊急招集連絡
・北川が南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会（臨時）に出席するとともに，他の職員は観測データの確認を実施

2024/08/09
・６時間ごとにデータの確認を実施
・一部観測点で地震後に歪変化が観測されたが，過去に観測された地震後の変化と同様であり，プレート境界のすべりに伴うような広域の地殻変動ではなく，観測点周辺での環境変化（地下水流動や応力場の変化等）の可能性が高いと判断

2024/08/10〜15
・半日ごとにデータの確認を実施
・紀伊半島周辺の観測点で認められた歪等の変化から短期的SSEの発生を確認し，断層モデルの推定を実施．過去にも同様な短期的SSEが発生してきた範囲であり，より浅い側のプレート間固着が強い領域への広がりは示唆されないことを確認
・一部の歪変化は磁気嵐によるものと判断

2024/08/15夜〜
・特別な注意の呼びかけの終了に伴い，緊急対応体制を解除
・南海トラフ地震関連解説情報への貢献のため，1週間ごとにデータ・SSE解析の状況を気象庁に報告