[PE31] 児童をほめる理由に基づく小学校教師の類型化
キーワード:ほめ, 教師, 理由
問題と目的
教師は,言葉がけ・表情・ジェスチャーなど,さまざまな種類のフィードバックを用いて子どもにメッセージを伝達している。その中でも,言語による肯定的なフィードバックは,用いられることが多い(Burnett & Mandel, 2010)。
言語による肯定的なフィードバックには“すごいね・がんばったね”など,言語表現自体のバリエーションも豊富だが,フィードバックを行う理由もさまざまである。児童と小学校教諭を対象としたインタビュー調査(青木,2018)では,教師のほめる理由は,ほめることがらや状況によって異なることが指摘されている。しかし,青木(2018)で対象となった教師は2名であり,より多くの教師を対象とした調査が必要といえる。そこで,本研究では,質問紙法による調査を行い,ほめる理由に基づく教師の類型化を行う。
方 法
小学校教諭74名(男性37名・女性37名)に対し,質問紙調査を行った。質問項目は,青木(2018)を参考に作成した教師が児童をほめる理由(40項目),指導行動尺度(弓削,2012)のうち,注意指導・受容に関する14項目であった。児童をほめる理由の項目例は「ほめることで,目標や見本を提示することができる」「ほめることで,ほめた活動への動機づけを高めることができる」などである。児童をほめる理由は4件法,指導行動尺度については5件法でたずねた。また,これらの他に,性別・年齢・教員歴・ほめる頻度などもたずねた。なお,本研究は,藤女子大学倫理審査委員会の承認を得て行われた。
結果と考察
児童をほめる理由(40項目)を用いて,クラスタ分析(ユークリッド平方距離を用いたWard法)
を行った。デンドログラムを参考に,4クラスタが適切であると判断した。次に,これらのクラスタの特徴を明らかにするため,ほめる理由・教員歴・ほめる頻度・指導行動尺度について4クラスタを独立変数とした分散分析を行った。指導行動尺度については,注意指導と受容それぞれの合計得点を用いた。
児童をほめる理由については,34項目においてクラスタ間に差がみられた。第1クラスタには,12名(男性8名・女性4名)が分類された。このクラスタは,「子どもに達成感を与えることを意識して,ほめるわけではない」など,提示した理由を否定する項目の評定値が高く,「~のためにほめる」といった項目の評定値はその他のクラスタよりも低かった。教員歴の平均は20.94年,ほめる頻度の平均は3.58であった。これらのことから,ほめる理由を意識していない群,あるいは,提示した項目以外の理由に基づき,児童をほめる群といえる。
第2クラスタには,32名(男性11名・女性21名)が分類された。このクラスタは,第1クラスタ同様,全体的にほめる理由の評点値が低かったが,ほめた活動に対する態度変容や動機づけの向上を理由とする項目では,第1クラスタよりも評定値が高かった。教員歴の平均は16.59年であった。また,ほめる頻度の平均は3.38で,第3・4クラスタよりも低かった(F(3, 70) = 5.62, p = .002)。つまり,ほめがもたらす態度や行動の変化といった比較的とらえやすい側面については,ほめる理由として挙げているが,その他の側面への影響は意識していない群といえる。また,ほめのもたらすさまざまな影響を意識していない点とほめる頻度の低さは,相互に関連すると考えられる。
第3クラスタには,10名(男性5名・女性5名)が分類された。このクラスタは,否定文の項目を除く項目において,その他のクラスタよりも評定値が高かった。第4クラスタも,第1・2クラスタよりも評定値の高い項目が多かったが,第3クラスタは,第4クラスタよりも「子どもは,ほめられるとうれしいので,ほめる」「子どもをほめるねらいは,子どもの承認欲求を満たすことにある」などの項目の評定値が高かった。教員歴の平均は18.94年,ほめる頻度の平均は3.90で,指導行動尺度のうち受容に関する項目はその他のクラスタよりも高かった(F(3, 68) = 6.57, p < .001)。ほめのもたらすさまざまな側面を意識し,ほめる理由として挙げているが,特に,子どもの感情面への影響を重視しているという特徴のある群といえる。
第4クラスタには,20名(男性13名・女性7名)が分類された。このクラスタは,全体的にほめる理由の評定値が高く,教員歴の平均は19.96年,ほめる頻度の平均は3.95であった。ほめる理由としてさまざまなものを意識しており,積極的にほめている群といえる。
教師は,言葉がけ・表情・ジェスチャーなど,さまざまな種類のフィードバックを用いて子どもにメッセージを伝達している。その中でも,言語による肯定的なフィードバックは,用いられることが多い(Burnett & Mandel, 2010)。
言語による肯定的なフィードバックには“すごいね・がんばったね”など,言語表現自体のバリエーションも豊富だが,フィードバックを行う理由もさまざまである。児童と小学校教諭を対象としたインタビュー調査(青木,2018)では,教師のほめる理由は,ほめることがらや状況によって異なることが指摘されている。しかし,青木(2018)で対象となった教師は2名であり,より多くの教師を対象とした調査が必要といえる。そこで,本研究では,質問紙法による調査を行い,ほめる理由に基づく教師の類型化を行う。
方 法
小学校教諭74名(男性37名・女性37名)に対し,質問紙調査を行った。質問項目は,青木(2018)を参考に作成した教師が児童をほめる理由(40項目),指導行動尺度(弓削,2012)のうち,注意指導・受容に関する14項目であった。児童をほめる理由の項目例は「ほめることで,目標や見本を提示することができる」「ほめることで,ほめた活動への動機づけを高めることができる」などである。児童をほめる理由は4件法,指導行動尺度については5件法でたずねた。また,これらの他に,性別・年齢・教員歴・ほめる頻度などもたずねた。なお,本研究は,藤女子大学倫理審査委員会の承認を得て行われた。
結果と考察
児童をほめる理由(40項目)を用いて,クラスタ分析(ユークリッド平方距離を用いたWard法)
を行った。デンドログラムを参考に,4クラスタが適切であると判断した。次に,これらのクラスタの特徴を明らかにするため,ほめる理由・教員歴・ほめる頻度・指導行動尺度について4クラスタを独立変数とした分散分析を行った。指導行動尺度については,注意指導と受容それぞれの合計得点を用いた。
児童をほめる理由については,34項目においてクラスタ間に差がみられた。第1クラスタには,12名(男性8名・女性4名)が分類された。このクラスタは,「子どもに達成感を与えることを意識して,ほめるわけではない」など,提示した理由を否定する項目の評定値が高く,「~のためにほめる」といった項目の評定値はその他のクラスタよりも低かった。教員歴の平均は20.94年,ほめる頻度の平均は3.58であった。これらのことから,ほめる理由を意識していない群,あるいは,提示した項目以外の理由に基づき,児童をほめる群といえる。
第2クラスタには,32名(男性11名・女性21名)が分類された。このクラスタは,第1クラスタ同様,全体的にほめる理由の評点値が低かったが,ほめた活動に対する態度変容や動機づけの向上を理由とする項目では,第1クラスタよりも評定値が高かった。教員歴の平均は16.59年であった。また,ほめる頻度の平均は3.38で,第3・4クラスタよりも低かった(F(3, 70) = 5.62, p = .002)。つまり,ほめがもたらす態度や行動の変化といった比較的とらえやすい側面については,ほめる理由として挙げているが,その他の側面への影響は意識していない群といえる。また,ほめのもたらすさまざまな影響を意識していない点とほめる頻度の低さは,相互に関連すると考えられる。
第3クラスタには,10名(男性5名・女性5名)が分類された。このクラスタは,否定文の項目を除く項目において,その他のクラスタよりも評定値が高かった。第4クラスタも,第1・2クラスタよりも評定値の高い項目が多かったが,第3クラスタは,第4クラスタよりも「子どもは,ほめられるとうれしいので,ほめる」「子どもをほめるねらいは,子どもの承認欲求を満たすことにある」などの項目の評定値が高かった。教員歴の平均は18.94年,ほめる頻度の平均は3.90で,指導行動尺度のうち受容に関する項目はその他のクラスタよりも高かった(F(3, 68) = 6.57, p < .001)。ほめのもたらすさまざまな側面を意識し,ほめる理由として挙げているが,特に,子どもの感情面への影響を重視しているという特徴のある群といえる。
第4クラスタには,20名(男性13名・女性7名)が分類された。このクラスタは,全体的にほめる理由の評定値が高く,教員歴の平均は19.96年,ほめる頻度の平均は3.95であった。ほめる理由としてさまざまなものを意識しており,積極的にほめている群といえる。