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[R10-O-3] 南大東島大東層ドロマイトの異なる続成史に伴う岩石組織の相違
キーワード:大東層、南大東島、ドロマイト、ドロマイト化作用、岩石組織、貯留岩
沖縄県南大東島は,沖縄本島の東方約340kmに位置する隆起環礁からなる海洋島であり,地表および地下浅部(少なくとも深度約50mまで)には,中新〜更新統大東層が広く分布する.大東層は,サンゴ礁起源の石灰岩とドロマイトからなり,3つの堆積ユニット(下位から堆積ユニットI,IIならびにIII)で構成され,その堆積年代は9.5〜6.5Ma,6.5〜6.0Ma,6.0〜2.5Maである(島津ほか,2015;島津,2018).ドロマイトは,島東部と島東側縁辺部に広く分布し,地下浅部では堆積ユニット境界を横切って,下部ドロマイトと上部ドロマイトの2つのドロマイト層準が存在する.ドロマイトは,海水ドロマイト化作用により形成されており(橋本,2005),下部ドロマイトのドロマイト化年代は5.6〜4.8Ma(一部1.7Ma),上部ドロマイトは6.7〜6.3Ma,5.0〜4.2Ma,ならびに3.3〜2.4Maの複数のドロマイト化年代を示す(島津ほか,2015;島津,2018).大東層炭酸塩岩の岩石組織や貯留岩性状については,島津ほか(2018)により堆積ユニットIII中の上部ドロマイトの検討はなされているが,堆積ユニットI中の下部・上部ドロマイトについては未だ十分に検討されていない.
そこで本研究では,下部・上部ドロマイトの岩石組織の層位的・地理的相違,ならびに貯留岩性状とその規制要因を明らかにするために,島東側縁辺部と島中央部で掘削された2本の試錐試料を用いて岩石組織の検討を実施した.前者は堆積ユニットIとIIIからなり,大部分が下部・上部ドロマイトで構成されるのに対し,後者は堆積ユニットI〜IIIの石灰岩からなり,堆積ユニットIの一部に下部ドロマイトが含まれる.これら試錐試料について,肉眼・薄片観察により岩石組織と続成作用の関係を明らかにするとともに,貯留岩性状の検討を行った.特に堆積年代とドロマイト化年代の関係と島内の地理的位置に着目し,異なる堆積ユニット間での上部ドロマイト,堆積ユニットI内での下部・上部ドロマイト,堆積ユニットI内での異なる初生岩質の下部ドロマイト,ならびに縁辺部と中央部の下部ドロマイト,という異なるセッティングにあるドロマイトの岩石組織について比較・検討した.
検討の結果,ドロマイトのセッティングの違いにより岩石組織には,大きな相違があることが明らかとなった.島東側縁辺域では,堆積ユニットI・IIIいずれの上部ドロマイトも,初生堆積物の堆積からドロマイト化までの時間間隙がきわめて短いため,堆積物は顕著な淡水性続成作用を受けることなく,堆積時あるいは堆積直後の海水ドロマイト化作用により,アラレ石や高Mg方解石からなる生物遺骸粒子はドロマイト化されている.一方,堆積後2Ma程度経過した後にドロマイト化作用を受けた堆積ユニットIの下部ドロマイトでは,初生的に不安定炭酸塩鉱物からなる粒子の多くは,淡水性続成作用により低Mg方解石へと安定化し,現在も方解石として保存されており,ドロマイトの多くはセメントとして存在する.また堆積ユニットⅠの上部ドロマイトは,堆積ユニットIIIに比べドロマイトセメントが卓越し,緻密な貯留岩性状の悪いドロマイトとなっている.これは,堆積ユニットⅠでは初生堆積物のドロマイト化作用に加え,後の複数回のドロマイト化により過ドロマイト化作用が進んだと考えられる.
一方,島中央部の堆積ユニットⅠの下部ドロマイトでは,初期の淡水性続成作用によりサンゴ等が溶脱した岩石組織が形成された後,自形ドロマイト結晶による結晶間孔隙が形成されており,これらは現在もよく保存されている.そのため縁辺部に比べて明らかに貯留岩性状は良好である.また,この組織は島中央部の地表に分布する堆積ユニットIIIの上部ドロマイトで認められる組織とほぼ同様であることから,ドロマイト化後,5Ma程度経ているにも関わらず,その後は続成作用による大きな組織の改変が起きていないことを示している.
橋本直明,2005,海水ドロマイト化作用のメカニズム:沖縄県南大東島大東層を例に.熊本大学学位論文,130p.
島津 崇,2018,新生代炭酸塩岩の貯留岩特性とそれに及ぼす近地表続成作用の影響-沖縄県南大東島大東層を例に―.熊本大学学位論文,179p.
島津 崇・八木正彦・淺原良浩・峰田 純・松田博貴,2015,南大東島のサンゴ礁発達史.月刊地球,37,514-520.
島津 崇・八木正彦・切明畑伸一・松田博貴,2018,新生代炭酸塩ビルドアップの孔隙システムと近地表続成作用の影響-沖縄県南大東島大東層の例-.石技誌,83,81-93.
そこで本研究では,下部・上部ドロマイトの岩石組織の層位的・地理的相違,ならびに貯留岩性状とその規制要因を明らかにするために,島東側縁辺部と島中央部で掘削された2本の試錐試料を用いて岩石組織の検討を実施した.前者は堆積ユニットIとIIIからなり,大部分が下部・上部ドロマイトで構成されるのに対し,後者は堆積ユニットI〜IIIの石灰岩からなり,堆積ユニットIの一部に下部ドロマイトが含まれる.これら試錐試料について,肉眼・薄片観察により岩石組織と続成作用の関係を明らかにするとともに,貯留岩性状の検討を行った.特に堆積年代とドロマイト化年代の関係と島内の地理的位置に着目し,異なる堆積ユニット間での上部ドロマイト,堆積ユニットI内での下部・上部ドロマイト,堆積ユニットI内での異なる初生岩質の下部ドロマイト,ならびに縁辺部と中央部の下部ドロマイト,という異なるセッティングにあるドロマイトの岩石組織について比較・検討した.
検討の結果,ドロマイトのセッティングの違いにより岩石組織には,大きな相違があることが明らかとなった.島東側縁辺域では,堆積ユニットI・IIIいずれの上部ドロマイトも,初生堆積物の堆積からドロマイト化までの時間間隙がきわめて短いため,堆積物は顕著な淡水性続成作用を受けることなく,堆積時あるいは堆積直後の海水ドロマイト化作用により,アラレ石や高Mg方解石からなる生物遺骸粒子はドロマイト化されている.一方,堆積後2Ma程度経過した後にドロマイト化作用を受けた堆積ユニットIの下部ドロマイトでは,初生的に不安定炭酸塩鉱物からなる粒子の多くは,淡水性続成作用により低Mg方解石へと安定化し,現在も方解石として保存されており,ドロマイトの多くはセメントとして存在する.また堆積ユニットⅠの上部ドロマイトは,堆積ユニットIIIに比べドロマイトセメントが卓越し,緻密な貯留岩性状の悪いドロマイトとなっている.これは,堆積ユニットⅠでは初生堆積物のドロマイト化作用に加え,後の複数回のドロマイト化により過ドロマイト化作用が進んだと考えられる.
一方,島中央部の堆積ユニットⅠの下部ドロマイトでは,初期の淡水性続成作用によりサンゴ等が溶脱した岩石組織が形成された後,自形ドロマイト結晶による結晶間孔隙が形成されており,これらは現在もよく保存されている.そのため縁辺部に比べて明らかに貯留岩性状は良好である.また,この組織は島中央部の地表に分布する堆積ユニットIIIの上部ドロマイトで認められる組織とほぼ同様であることから,ドロマイト化後,5Ma程度経ているにも関わらず,その後は続成作用による大きな組織の改変が起きていないことを示している.
橋本直明,2005,海水ドロマイト化作用のメカニズム:沖縄県南大東島大東層を例に.熊本大学学位論文,130p.
島津 崇,2018,新生代炭酸塩岩の貯留岩特性とそれに及ぼす近地表続成作用の影響-沖縄県南大東島大東層を例に―.熊本大学学位論文,179p.
島津 崇・八木正彦・淺原良浩・峰田 純・松田博貴,2015,南大東島のサンゴ礁発達史.月刊地球,37,514-520.
島津 崇・八木正彦・切明畑伸一・松田博貴,2018,新生代炭酸塩ビルドアップの孔隙システムと近地表続成作用の影響-沖縄県南大東島大東層の例-.石技誌,83,81-93.