日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

T3[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

[1poster17-22] T3[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

2023年9月17日(日) 13:30 〜 15:00 T3_ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[T3-P-1] 下北ジオ検定を通じた学習効果の検討と教職員へのフィードバック

*【ECS】朝日 啓泰1、太田原 潤1、中村 健一1、宮北 健一1、長内 孝太1、甲 健太1、東出 桃子1 (1. 下北ジオパーク推進協議会)

キーワード:ジオパーク、下北ジオパーク

【はじめに】
 下北ジオパークでは、地域住民の知識欲を刺激することで下北ジオパークへの理解促進及び活動の輪を広げ、ジオパークに触れるきっかけづくりとして、「下北ジオ検定」を令和2年度から実施している。「下北ジオ検定」では、令和2年度に発行したガイドブックの内容を中心に全100問の下北ジオパークの理念や各ジオサイトを出題し、80点以上で合格としている。「下北ジオ検定」は現在では下北ジオパーク認定ガイドの認定条件として定めており、ガイドの質を高める効果と、ジオパークガイドの間口を広げる役割を担いつつある。
 また昨年度は小学校高学年から中学生向けの「下北ジオ検定ジュニア」も開催した。 郷土愛の醸成を目的の一つとしている下北ジオパークでは、ジオパークを通した学習を通して「地域資源の価値を理解し保全の意識を有した上で、地域の魅力を把握している子どもを育てること」を目標としている。そのような背景のなか、中学生以上向け副読本「みんなの下北ジオパーク」は、地域資源の価値に関する知識に加え、地域の魅力を理解するための情報を取り入れられる内容として作成し、各教育機関等へ配付している。 当事業では、みんなの下北ジオパークを学習した児童・生徒を対象として自らの学習成果を試す機会を創出するとともに、ジオパークの学習の知識、理解度を測り、今後の事業や副読本改訂の参考として活用することを目的として実施した。
【実施内容】
 下北ジオ検定ジュニアは、下北管内の小中学校に配布している副読本「みんなの下北ジオパーク」から50問の問題を出題し、合格点は「下北ジオ検定」と同じく、80点とした。また回答者の理解の確認が目的のため類似語を列挙したようなひっかけ要素はなるべく排除して問題を作成した。12月10日に開催したジオ検定ジュニアでは小学3年生~中学3年生の合計13名(小学生7名、中学生6名)が受験した。 また比較のために、大平小学校の5~6年生にも同様の問題を抜き打ちで実施し、回答率の比較を行った。
【実施結果と考察】
 13名のうち、合格者(80%以上の正答率)は6名に留まり、当初の想定よりも下回る結果となった。各問題の回答率を検討すると、特にジオサイトの場所を問う地理問題で、実際の検定と大平小学校ともに回答率が低い傾向が見られた。問題となったジオサイト「ちぢり浜」は下北管内の多くの小学校で課外学習の場として使われており、ちぢり浜で見られる地形の「ポットホール」の正答率が90%を超えた一方で、ちぢり浜の場所を問うような地理的な要素の理解は十分に進んでいなかったことが明らかになった。  
 また下北地域を代表する魚介類であるマダラに関する問題も出題した。マダラは陸奥湾沿岸では縄文時代より漁獲されており、現在まで下北の重要な魚介類として位置付けられている一方、その回答率は大平小学校の場合30%を下回る結果となった。これは地元の特産物や地質遺産の歴史的な経緯や価値がこれまでの出前講座では十分に浸透していなかったことを示すと考えられる。  これらの結果を基に、令和5年度からの出前講座では1)ジオサイトの地理的要素や他の地区やジオサイトとの位置関係を紹介した内容、 2)認知度が低くかつジオパーク内の文化と密接に関わっている事項の内容を盛り込むなど内容や方針の転換を行っている。
【教職員へのフィードバック】
 今回の下北ジオ検定ジュニアの結果は、下北管内の生徒の地元への理解度に関する重要な知見であり、学校教員にも今回の検定の結果と今後の出前講座の方針を周知する場が必要と考える。本発表では今年度新たに開催する教職員の方々にジオパークでの活動や下北ジオ検定ジュニアの結果を共有する「教職員向け研修会」での現場の教職員の方々の意見やアンケート結果も報告する。