日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

T6[トピック]堆積地質学の最新研究【EDI】

[2poster26-52] T6[トピック]堆積地質学の最新研究【EDI】

2023年9月18日(月) 13:30 〜 15:00 T6_ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[T6-P-5] 露頭の3次元点群データに対するResUNetを用いた岩相自動判定

【ハイライト講演】

*佐藤 瑠晟1、成瀬 元1 (1. 京都大学理学研究科)

世話人よりハイライトの紹介:本講演は,ドローン等で撮影された画像をフォトグラメトリと機械学習により,露頭の岩相を機械的に判定させることを試みている.これにより,現地調査の効率化を図れるだけではなく,直接行くことが困難な露頭の調査もできるようになる可能性を秘めている.地質学者は従来,自身の足で現地に行き,自身の目で露頭を観察することを重視する傾向が強いが,技術革新により色々な調査手法が行われる時代になるのかもしれない.※ハイライトとは

キーワード:マストランスポート堆積物、機械学習、フォトグラメトリ

近年,ドローンで撮影された画像をフォトグラメトリ技術によって処理することで,露頭表面の形状や色を記録した(3次元点群)を容易に作成できるようになった.この点群データから岩相の3次元的空間分布を把握することができれば,堆積プロセスや堆積岩の物理特性に関する定量的な解析に役立つ情報が得られるものと期待される.しかし,巨大な露頭のデータから人為的に3D岩相モデルを作成することは作業効率の面で問題があり,現時点では堆積学分野において3次元露頭解析から大きな成果は得られていない.そこで,本研究は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて露頭の3次元点群データから自動的に岩相を判定する手法の開発を行った.本研究では,北海道東部に分布する白亜系-古第三系根室層群厚岸層の海底地滑り堆積物が露出する恵茶人海岸の露頭を調査し,ドローンによって撮影された多数の露頭写真から,フォトグラメトリ技術によって露頭3次元点群の構築を行った.次に,その3次元点群データを多数の2次元画像データに変換した.この変換の際に,各2次元画像データは,露頭表面の色に加えて凹凸情報をチャンネルとして持つように設定した.そして,得られた画像の一部を抽出し,岩相のラベル付けを手動で行ってCNNを訓練するための教師データを作成した.本研究では,岩相を自動判別するCNNモデルとして,残差接続を有したU-Net型のニューラルネットワークを構築した.トレーニングに際しては,岩相を判別するクラススト凹凸情報がCNNのトレーニングに与える影響を調べるため,計4つの学習条件でトレーニングを行った.モデルの訓練の結果,訓練データとは独立したテストデータに対して,本研究のモデルは全ての条件で約80%以上のピクセル判別率(precision metrics)を示した.CNNモデルを前述の恵茶人海岸露頭の全体に適用したところ,露頭中の礫質泥岩,堆積岩ブロック,露頭ではない部分の植生,砂浜,表土の空間分布が自動判別された.構築された3D岩相モデルと実際の露頭を肉眼で比較して見たところ,岩相の空間分布は十分な精度で一致していた.今後,この手法の適用によって,研究者が直接アクセスすることが難しい大型の露頭であっても,迅速に3D岩相モデルを構築することができるようになり,多くの地域で定量的な堆積岩の解析が行われるようになるものと期待される.