日本地質学会第130年学術大会

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セッションポスター発表

T13[トピック]沈み込み帯・陸上付加体

[2poster68-80] T13[トピック]沈み込み帯・陸上付加体

2023年9月18日(月) 13:30 〜 15:00 T13_ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[T13-P-12] 熊野沖南海付加体前縁部における地すべり表層堆積物中の堆積岩礫の間隙率

*福地 里菜1、趙 陽2、白石 和也3、浜橋 真理4、村山 雅史5、芦 寿一郎2、山口 飛鳥2 (1. 鳴門教育大学、2. 東京大学大気海洋研究所、3. 海洋研究開発機構、4. 山口大学、5. 高知大学)

キーワード:南海トラフ、海底地すべり、ピストンコア試料

海山などの地形的高まりの沈み込みによってもたらされる付加体の発達過程の変化と地震活動の関係はこれまで数多く議論がされており(Scholz and Small, 1997; Cloos, 1992; Cloos and Shreve, 1996; Wang and Bilek, 2014 ほか),近年ではスロー地震との関係性も明らかになってきた(Sun et al., 2020ほか)。海底面の凹凸よりもプレート境界断層面の摩擦が付加体前縁部の構造発達に寄与するとの議論もなされているが(Okuma et al., 2022),その原因や発達過程と時空間的な情報についてはデータが少ない。 熊野沖付加体前縁部では磁気異常データ(沖野, 2015)や地震波反射断面(Moore et al., 2009)から,南海トラフの北西側に地形的高まりが沈み込んでいることが既に知られており,国際深海掘削計画(IODP)ではC0006地点,C0007地点,C0024地点にて掘削され,層序と年代により構造発達がわかってきた(Yamaguchi et al., 2020)。これらIODP掘削地点の西側では,付加体前縁部に約10 km平方におよぶ滑落崖を有する地すべり地形が発達し,その原因の一つとして地形的高まりの沈み込みによるものと考えられる。 そこで,2022年3月に新青丸 第KS-22-3次航海において,付加体前縁部斜面の海底地すべりに伴う崩壊堆積物と想定される海溝部の堆積物から採泥を行った。採泥は,ピストンコアラーを用い,2.8m採取した。採取したピストンコア試料は,非破壊の物性計測や岩相記載を行い,海底下1.4 m以深からマトリックスより硬い堆積岩礫が混じる岩相示した.そのため,この堆積岩礫と付加体前縁部の堆積物の複数対比によって礫の由来が明らかにするために,堆積岩礫の間隙率を測定し,IODP掘削地点と比較を行った. 堆積岩礫の間隙率は48-58%を示し,C0006地点の海底下1-77 mや450-600 mの間,C0007地点海底下3-34 mや海底下74-84 mの間,C0024地点では海底下4-113 mの深度などで,複数の深度で類似した値を示した.また,沈み込み前の四国海盆堆積物の掘削地点であるC0011地点では海底下約250 mに相当する.これらの間隙率の深度分布から,四国海盆上部の間隙率低い堆積層が前縁部の衝上断層によって付加体の上部に露出する可能性も考えられる.しかしながら,しかし,採泥を行った地点の周辺では,地震波反射断面から海洋地殻上面の地形的高まりの沈み込みと付加体の変形や斜面の崩落した構造が顕著であることから,付加体前縁部形成時の衝上断層による隆起に別の影響が加わった結果と考えられる.すなわち,付加体形成時の衝上断層運動により形成された付加体が,その後の地形的高まりの沈み込みによってさらに隆起した影響によって,付加体前縁部のIODP掘削サイトにおいて観察された更新世の付加した海溝充填堆積物の表層約100 mで海底地すべりが起き,それが堆積岩礫として採取できたと考えられる.
【引用文献】
Cloos, M. (1992), Geology, doi:10.1130/0091-7613(1992)020<0601:TTSZEA>2.3.CO;2
Cloos, M. and Shreve, R.L. (1996), Geology, doi:10.1130/0091-7613(1996)024<0107:SZTATS>2.3.CO;2
Moore et al. (2009) Proc. IODP Volume. Vol. 314. No. 315/316, doi:10.2204/iodp.proc.314315316.102.2009.
沖野 (2015).地学雑誌, 124(5), 729-747. doi.org/10.5026/jgeography.124.729
Okuma et al. (2022). Tectonophysics, doi:10.1016/j.tecto.2022.229644
Scholz and Small, (1997) ,Geology, doi: 10.1130/0091-7613(1997)025<0487:TEOSSO>2.3.CO;2
Sun et al. (2020), Nat. Geosci., doi: 10.1038/s41561-020-0542-0
Yamaguchi et al., (2020) IODP Expedition 358 C0024, doi: 10.14379/iodp.proc.358.104.2020
Wang and Bilek (2014), Geology, doi: 10.1130/G31856.1